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「これと――これかな。あ、その本はあんまりためにならないかも。
書いてくださっている先生には申し訳ないんだけれども、結局、暗記を勧めているだけになってるから。効率を求めるなら、そっちの本の方がいいと思う」
天宮翔太は――そう言って、次々と、本棚から参考書を引き出し、私に手渡して行く。一冊、二冊、三冊、四冊、これで五冊。
直江津高校からそう遠くない大型書店――である。
六月十二日、月曜日。
その放課後。
いよいよ今週末の金曜土曜にと迫った文化祭の打ち合わせと準備を終えた、クラス委員長の天宮と、副委員長の私は、その帰り道、一緒に本屋さんに寄った。
というか、私が天宮に頼んで、一緒に来てもらった格好だ。
七三、眼鏡。
委員長の中の委員長。
究極の優等生、天宮翔太。
「悪い、天宮……そろそろ予算枠を超えそう」
「へ？ 予算枠って？」
「一万円。家に帰れば、もうちょっとあるんだけど、財布の中には、それだけ」
「あー。参考書って割と高いからね。内容を鑑みれば、しょうがないことではあるけれど。じゃ、参考書の良し悪しの他に、費用対効果も考えようか。この本は返却して、こっちを、と」
天宮翔太――
彼もまた、怪異にかかわった者である。
しかし彼の場合は、私や月崎、あるいは相川とはまた別枠で数えるべきかもしれない――何故なら、彼は怪異とかかわった、その記憶自体を、喪失してしまっているからだ。
私の春休みの地獄に匹敵する、ゴールデンウィークの悪夢を、まるっきり、忘れてしまっているのだ。
けれど私は憶えている。
私は鬼。
月崎は猿。
相川は蟹。
そして天宮は――猫。
「でも」
天宮は唐突に言った。
「俺は、少し、嬉しいな」
「……何が？」
「Aちゃんが、参考書選びを手伝って欲しいとかさ、そんなこと、言い出すなんて。Aちゃんが真面目に勉強する気になったんだとすれば、俺の努力も無駄じゃなかったんだなあって」
「………………」
いや。
お前の努力はあんまり関係ないんだが。
こいつ、私のことを不良と勘違いしていて、更生させるために無理矢理私を副委員長にしたところがあるからな……。
的外れというか、ほとんど暴走だ。
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灰猫(プロフ) - realさん» 毎度コメントくださりありがとうございます！🙇♀️正直作者自身も過去に作った設定などを見返してはそこにそのキャラ置くんだ！？となっているので驚きながら書いていますw少しずつ更新していきますのでお待ち頂けると幸いです！ (2022年5月21日 11時) (
レス) id: e872c5e500 (このIDを非表示/違反報告)
real(プロフ) - 元まーかー、りょくちゃのやつです()毎度コメント失礼します＼(_ _)今回の配役は驚きましたが最高です😊更新楽しみにしてます！ (2022年5月19日 19時) (レス) id: f217387575 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：灰猫 | 作成日時：2022年5月5日 5時
