5話 ページ6
「おはよう」
僕は声をかけた。
驚いて本から顔をあげる二人。
創也「……おはよう」
『おはよ…』
どうして僕が図書室にいるのかと、不思議そうな顔でこちらを見ている。
…会話が続かない。
僕が何も喋らないので、二人は本に目を戻した。
まずい！このままでは図書室に何をしにきたのかわからない。とりあえず、会話のきっかけを見つけなくては！
「えーっと…2人とも何読んでるの？」
二人に近づいて、僕は言った。
よく考えてみたら、クラスメイトとはいえ今まで二人とまともに話した事がなかった事に気がついた。
創也「ああ、これ？安倍晴明の研究書だよ」
『私のは…ただの小説だよ』
本をパタンと閉じ、背表紙を僕に向ける創也。
一目で僕には縁のない本だという事がわかる。
二人は、そのまま僕を見ている。
突然話しかけてきた目的を、探ろうとしているような目だ。
「あのさ…サンバイズって、好き？」
創也「知ってる」
『…』
創也は好きか嫌いかは答えずにそれだけ言うと、また本を開いた。Aに関しては答えてすらくれない。
それ以上の質問は拒絶するかのように。
…会話が続かない。
別に、不機嫌なわけじゃないだろう。誰も寄せ付けないような壁をつくっているってのが、僕たちクラスメイトが持っている、二人に対する印象だ。
自己中心的とか非協力的ってのとは、ちょっと違う。
クラスで何かやる時は、みんなといっしょになってやってるし、それなりに楽しそうだ。
でも、なんていうんだろう……
僕らがクラス行事で盛り上がるのは、純粋に楽しいからだ。
でも二人はみんなと一緒に盛り上がりながらも、冷静な部分を残している。
どういう時に人間は楽しいのか？
この状況でみんなはどう行動するか？
そういうふうに、自分自身を含めた世界を冷静に観察しているような気がする。
僕がそんなことを考えている間に、二人とも本の世界に戻ってしまった。
本だけ見つめる二人の目。
すでに、目の前に立っている僕のことになど興味をなくしたようだ。
朝の図書室に、気まずい空気が流れる。
いつもの僕ならこの段階で二人との会話を諦め、教室へ帰っていただろう。
むりに話さなくたって、教室にはたくさん友達がいる。おしゃべりの相手には不自由しない。
ぶっきらぼうな二人といるより、みんなと教室でワイワイやってる方が楽しい。
だけど、今朝の僕は違う。
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すた(プロフ) - 円陣はずれさん» ありがとうございます！ (7月27日 22時) (
レス) id: 547c4df5f1 (このIDを非表示/違反報告)
円陣はずれ - 都会トムの話って少ないですよね...悲しいです。続き楽しみにしてますして！ (2023年2月25日 22時) (レス) id: dd75b894fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すた x他1人 | 作成日時：2022年6月18日 23時
