ふぇいくかっぷる。《Ryohei.A》 (ページ29)

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"今日の昼、第三会議室来て。"

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付箋に記されたその字は

男の人にしては丁寧で綺麗だった。

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お弁当箱を持ってある場所へと足を進める。

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ある場所とは、そう。第三会議室。

会社の中でも奥の、奥の部屋。

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いくら会議室とはいえ。

ランチの時間だからとはいえ…

同じ部署の者が、食堂以外の場所で二人でご飯を食べてるなんてバレたら。

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社内恋愛禁止のこの会社からしたら

それすらもNGに含まれてしまう。

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コンコン、と部屋のドアをノックすると中からはーいと返事がする。

ドアを開けると、案の定彼がそこには居た。

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あ「…ごめん。お待たせ！」

阿「ううん。俺も今来たばっかり」

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結構狭目な部屋。

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どうしても人の目が気になり周りをキョロキョロしてしまう。

阿「ふふ。大丈夫だよ…？ここなら誰も来ないから」

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そんなの、分からないじゃん。

なんで亮平はそんなに余裕なの？

そう思いながらも、彼の隣に腰をかけた。

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阿「ここ分かった？結構歩いたでしょ？」

あ「うん。割と迷ったかな。でもどうしたの？今日はここへ来て、なんて…」

阿「ん。別に？理由は特にない、けど…」

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そっか。そう言葉を発したのも程無くして

彼があー、でも…と少し考えながら言う。

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阿「Aと二人でご飯食べたかったっていうのは有るかも」

あ「そ、そんなの…別に食堂でも」

阿「あそこじゃゆっくり話せないでしょ？」

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隣の亮平がふふ、と唇を結ばせて笑っている。

いつもの彼が悪戯で、男らしい彼なら

今の貴方はきっと、真逆なんであろう…そう思う。

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ずるいな。とは思うけど、彼は私の彼氏なんだから

こういうことを言ってくれるのだって当たり前なんだ、よね…？

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はあ、どこまでも狂っちゃう。

亮平と一緒に居ると。

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ひとまずお弁当に手をつけ…？

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阿「…ちょっと待って」

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突然、しーっと唇に指を当てる彼。

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コツ、コツと誰かの足音が聞こえる。

その音はどんどんこちらへ迫ってくるみたいで…

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うっそ。どうしよう…

バレたら相当やばくない？

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あたふたしている私とは対照的に

それでも彼はやはり冷静だった。

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そのまま、私の手を取り…

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一番奥の棚の向こうへと二人で身を隠した。

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