ふぇいくかっぷる。《Ryohei.A》 (ページ19)

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あ「黒色の車。あ、あった…」

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阿部さんから送られて来たメールに

目を通しながら待ち合わせに指定された場所へ。

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会社から少し歩いた歩道の近く。

誰かに見られたらまずいから…お互い時差で会社を出てここで落ち合うことになった。

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なんか有名人カップル同士のお忍びの交際みたいだなぁ、なんて。

つい笑ってしまいそうに…

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コンコン、と車の窓の縁をノックすると

ゆっくり窓が開いていく。

その隙間から阿部さんの顔が覗かれる。

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阿「…ちょっと待ってて」

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ガチャ…と鍵が開くような音がすると彼が運転席から下りて来て。

そうして、助手席側のドアを開けてくれた。

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阿「乗って？」

あ「ありがとう、ございます…」

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すっごいジェントルマン。

この人、こうしたら女の子が喜ぶとか

そういうこときっと分かってるんだろうなぁ…

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車内は阿部さんの柔軟剤のようないい香りがした。

この匂いなんだかすっごく安心するな。

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あ「、っ」

阿「…」

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ミラー越しに阿部さんと目が合う。

彼は少しだけ頬を緩ませるとハンドルに手をかけ

そして、そのまま車は動き出した。

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しばらく沈黙が続く。

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ただ、彼の運転に身を任せる。

本当にしばらく恋愛経験がないから男の人と二人きりってどうしたらいいものか…

とっても目のやり場に困る。

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阿「…ふっ」

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そんな折、隣で阿部さんがふと微笑んだ。

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阿「…やっぱりまだ慣れない？」

運転をしながら、彼が私を横目で見る。

優しくも、温かい。そんな声のトーンだった。

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あ「そんなの、当たり前です！というか私はまだ…」

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そもそも受け入れられてないし…こんなの誰の為になるんだって思っているし。

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あ「私は阿部さんと違って…」

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阿「亮平」

あ「っ、」

阿「俺達付き合ってるんだから亮平って呼んでよ。あと敬語もなし…ね？」

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"亮平"

そう彼の名前を呼ぶと満足したように優しく微笑んで、またハンドルと向き合った。

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な、にこれ。

ねえ、阿部さ…いや亮平。

まだ始まったばかりだけどやっぱりこんなのズルくない？

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