因果応報 (ページ44)

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黒Side

「ふっかさんのどこが好き？」

重たい空気から逃げたくて康二に問い掛ける。

自分からふっかさんの話題を切り出すなんて
馬鹿馬鹿しいけどもうヤケクソだった。

「全部。俺の弱いとこも駄目なとこも全部包み込んでくれるんよ。いつも大人で余裕なんやけど俺のことになるとちょっと余裕なくなんねん。…俺のこと、好きやから。」

「そっか…」

「俺のこと好き？って確認しなくてもふっかさんが俺のこと好きで好きでたまらないってちゃんと分かんねん。重たい俺と同等でおってくれて同じくらい嫉妬してくれるんよ。…だから俺はふっかさんが好きやねん」

まるで元恋人である俺に言い聞かせるような言葉に
胸が張り裂けそうだった。

クールぶって好きって言えなかった俺は、
康二に好き？と聞かれてもはぐらかしてばかりだった。

康二の嫉妬に疲れて重い重いと逃げてばかりいて、
俺だって嫉妬はしていたけど康二に伝えることは
たったの一度もなかった。

そんな元恋人の俺と現恋人のふっかさんは、全然違う…

「康二さ、もしもだよ？もしも記憶が無くなる前に付き合ってた人がいたとしたらどうする？」

自分で聞いたくせに勝手に傷付いて
何も言えなくなった俺に代わって
佐久間くんが問い掛けた。

「今はふっかさんが好きやしこの気持ちが変わることは無いからちゃんと別れるんちゃうかな、その人と」

「…っ」

―ガシャンッ

「危ないっ！大丈夫？」

「びっくりしたぁ…」

「…めめっ！怪我は無い？ボーッとしたらあかんよ～」

康二の言葉に動揺して
持っていたグラスを落としてしまった。

こんな時でもすぐに俺の怪我の心配をしてくれた康二に
好きという気持ちがまた膨らんでしまう…。

「ご、めん…。俺ちょっと予定あるの忘れてて…。明日早くて…。もう眠たいから…」

頭の中はぐちゃぐちゃだった。

何が言いたいのか理解出来ないであろう言葉に
気を遣った佐久間くんと阿部ちゃんは頷いてくれて
俺を帰してくれた。

とにかくこの場所から早く逃げ出したい…

―バタンッ

「……っく……ぅっ……」

拾ったタクシーの中、
声を押し殺して泣く。

気を遣った運転手さんが
ラジオのボリュームを上げる。

そこから流れてきた
この場に似つかわしくない
ご機嫌なラブソングに、
涙が止まらなかった…。

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