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Aさんが待つ車に戻り、
後部座席に座る。
『おかえり。
⋯⋯見つけられた？』
ぶらぶらと左手を宙で揺らすAさん。どうやらこの人も分かっていたみたいだ。
だからこそオレの後を追って
わざと誘拐された。
⋯⋯
この人は、オレの話とニュース映像だけで事件の概要を理論的に組み立て、推理したのだ。
その並外れた推理力はもちろん、分析力や洞察力、観察力。全ての能力が普通では無い。
この人は紛れもなく赤井さんの相棒だ。
「そ、それで？犯人が分かったって言ってたけど⋯⋯聞かせてくれるのよね？」
「うん。お姉さんがさっきボクが言ったことを守ってくれるならね」
『⋯⋯おー、』
先ほど訪ねた３人の女性のうち、一人だけに当てはまった特徴を元に犯人を述べていく。
浦川さんは黙ってオレの推理を聞いていた。
Aさんも口元に僅かな笑みを乗せてオレの推理を聞いている。その横顔が妙に艶っぽく見えるのは夜だからだろうか。
３人目の強盗犯の正体について話終えると、今まで口を噤んでいた浦川さんが口を開いた。
「でもその推理、一つだけ間違ってたわよ───」
「え？」
彼女が続ける言葉に絶句した。
じゃあまさか、もう１丁の本物は⋯⋯！！
ｶﾞﾁｬ
車のドアが開く音がして、
体がふわりと雑に宙に浮いた。
思わず目を瞑ると背中に衝撃。
「そこまで知られたら黙って帰すわけにはいかないね！」
『あらら〜』
普段と違わずにふにゃりと笑うAさんは銃口を頭に突きつけられていた。
⋯⋯本来なら、あそこに居たのはオレだったはず。
Aさんはオレを投げてすり替わったんだ。⋯⋯あの一瞬で。
でも大丈夫だ。
オレにはまだ麻酔銃がある。
「さぁ早く車を出しな」
女に気づかれないように麻酔銃を打ち出した、
はずだった。
だが目の前の女が眠る様子は無い。
「(ど、どうして！？！？)」
見ると麻酔銃は不発。もしかして投げられた時に誤射したんじゃ⋯⋯？
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作者名：テール | 作成日時：2023年5月10日 21時
