第十五話 高鳴る鼓動�� ページ44
思い返すと、あれは接吻をしようとしていたのではないのか、という結論に、俺は行儀悪く机に突っ伏した。
「ななななななな！なんだよそれええええええ！！」
目の前に座っている善逸が騒ぎ始める。
さっきまで笑っていたけれど、今はいつものちょっと変な顔をしているであろう慌てっぷりだ。
恥ずかしすぎて顔を上げられないので見えていないが。
「え、え！？炭治郎それでなんで本当気づいてなかったんだよ！？それ絶対好きじゃんか！女の子としてものすっごい意識してるじゃんか！！」
「っ、善逸！恥ずかしいから大きな声で話さないでくれ！」
周りから微かに笑い声が聞こえるのが耐えられずに、残りのご飯をかきこんで外に出る。
早歩きで歩いていると、いつの間にか追いついた善逸が声をかけてきたので速度を落とす。
「あのさ、Aちゃんも“大好き”って言ったんだろ？それってさ、」
「Aは俺を兄のように慕ってくれている。実際俺もその、こっ恋をしているなんて、思ってなかったし。」
きっと、家族や友情の好きという意味だろう。
そう口にすると、途端に気分が落ちていく。
善逸は納得いかないように首をかしげると、何かを考えるように黙った。
「なあ、お前匂いでわかんないの？」
「…あれから何回かAとは会っているが、彼女独特の甘い匂いがするから、よくわからないんだ。」
そう言うと、隣を歩いていたはずの善逸が立ち止まったようで、俺も止まり振り返る。
そこにはなんとも表現のし辛い顔の善逸がいた。
「なんだその顔は。」
「いや、なんともやべぇ炭治郎だなと思って。」
「は？」
「いや…、まああれだ！せっかく恋ってわかったんだし、頑張ってみようぜ炭治郎！俺は応援してるよ！」
そういって笑う善逸から嬉しそうな匂いがした。
頑張るといっても、俺はこの気持ちをまだ理解できていないから、そこから始めなければいけないのだが。
いつでも相談しろよ！と歩き始める善逸に、本当に優しい人だと改めて思う。
善逸に話してよかった。
少しだけ、心が軽くなった気がして、俺は彼の背中を追いかけた。
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作者名：さりー | 作成日時：2020年7月10日 21時
