第十三話 強くなりたい�� ページ39
消えてしまいそうなほど小さなその声は、初めて聞く彼の弱い声だった。
「…怖かったんだ、最初から。Aが鬼との戦いでもし、死んでしまったらって。だから、本当は嫌だったんだ、任務に連れて行くのは。でも、Aが決めたことだからって、俺が守ろうって思っていたんだ。…でも、守ったのは俺じゃなくてポケモンだった。俺は、何もできなかった。」
彼は優しい。
優しすぎるから、自分を責めている。
「君の力になりたいと思ったんだ。Aの言葉が嬉しかったんだ。俺と禰豆子を受け入れてくれて、嬉しかったんだ。なのに俺は……！」
彼の表情はわからない。でも今体を離してはいけない気がした。
「っ、ごめん。俺は今、どうしたらいいかわからないんだ。」
「……傍にいて。」
「え…？」
「炭治郎さんは、出会った時から私を守ってくれているよ。炭治郎さんがいてくれたから、私は今ここにいるんだもん。」
泣いてはいけない、と頭ではおもいつつも、目からは涙があふれてくる。
「私にできることは少ないけど、私、炭治郎さんの力になりたくて戦うことを決めたんだよ。一緒にいたくて戦うことを選んだんだよ。傍にいられるように、私…。っだから、自分を責めないで。私頑張るから。炭治郎さんが笑ってくれるように頑張るから。」
だから、私の傍にいて。
その言葉は言えなかった。
炭治郎さんが私を強く抱きしめ返してくれたから。
離れないように、想いを伝えてくれるように、痛いくらい強く。
「俺の傍から離れないでくれ。君を…Aを守れるように強くなるから。」
どれくらいそうしていたのだろう。
最初は強かった力も今は大分加減されていて、炭治郎さんの体温と鼓動が心地いい。
あれだけ眠れなかったのに、今は睡魔と戦っている。
眠ってもいいのだけれど、もう少し炭治郎さんを感じていたい。
思えば、なんだか恥ずかしい事を口にしたような気がする。
でも炭治郎さんの気持ちも聞けて嬉しかったし、なにより嫌われてなくて本当に良かった。
「A、このまま寝てもいいぞ？俺が運ぶから。」
ポンポンと背中をリズムよくたたくそれは、いつもの優しい手で、自然と意識が遠くなっていく。
「…たんじろ、さ…。」
「…ん？」
「―――――。」
眠りにつくその瞬間、私は何を口にしたのか、全く覚えていなかった。
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作者名：さりー | 作成日時：2020年7月10日 21時
