昔も今も、これからも第一幕 (ページ36)

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第十二話　恐怖の匂い② ページ36

いつの間にかお館様の屋敷へ行き、鬼殺隊と共に戦う道を選んだ彼女。

俺は、彼女がいなくなってしまうかもしれない事に恐怖した。

彼女はこの世界とは関係がない。
どうしてそんな彼女が鬼と戦わなければならないのか。
もちろん交換条件の話も聞いたが、俺には理解できなかった。
彼女が大切に想うポケモンたちが強いのもわかった。
少し安心したが、それでも、俺の中の恐怖は消えなかった。

だから、伝令を無視する事も考えた。
俺だけが南へ向かえばいい、そう思った。

「蝶屋敷ィ！蝶屋敷ヘ行ケェ！！コレハオ館様カラノ命令ィ！！」

そう俺の周りを飛び回る鎹烏に逆らうことはできなかった。

蝶屋敷へ迎えに行くと、しのぶさんから声をかけられた。

「炭治郎くん…、Aさんを、お願いしますね…。」

いつもの笑顔が崩れていた。
眉間に皺を寄せて話すしのぶさんを見るのはめずらしい。

心配。不安。

そんな匂いがした。
しのぶさんも、俺と同じような気持ちだろうと気づいたので、その想いを受け取るように、俺はゆっくり頷いた。

蝶屋敷から出てきた彼女は、俺に笑顔を向けた。
覚悟の匂いがした。

でも、隠しきれていない恐怖と不安の匂いが、心に刺さる。

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