第十一話 覚悟�� ページ33
「っ！！」
炭治郎さんが刀を抜いて私の前に立つ。
考え事をしながら歩いていたからか、あたりが暗くなっていることに気づけなかった。
目の前には、鬼がいた。
涎を垂らし、ギラギラとした目を向けられる。
人とは似ても似つかぬその姿に、喉から声にならない音が漏れる。
怖い。怖い怖い怖い。
体の震えが止まらなく、金縛りにでもあっているかのように動かない。
目の前では、鬼と炭治郎さんの攻防が始まっている。
このままではただの足手まといになってしまう。
動かなければ。
そう、頭ではわかっているのだけれど。
炭治郎さんが鬼に吹っ飛ばされるのが目に入る。
ああ、大丈夫だろうか。
近くにあった木にたたきつけられてなお、彼は立ち上がり鬼に向かっていく。
私は彼を助けたかった。力になりたかった。
覚悟を決めたつもりだった。
ふらふらと立ち上がる炭治郎さんの背中が目の前にある。
「っ、A…、絶対に守るから…、安心してくれっ。」
私は、なにをしているのだろう。
「禰豆子すまない…、Aを頼むっ！」
そういって地面を蹴りだし鬼に向かっていく。
置いた箱の中から禰豆子さんが出てきて、私の前に立つ。
彼女は優しく私を抱きしめて、すぐに鬼を睨みつける。
また、彼らに助けられている。
私は助けられるためにここにいるのか。
…違う。
思い出せ。
あの時の気持ちを。
彼らの力になりたいと、強く願ったあの気持ちを。
もう一度覚悟を決めろ。
もっともっと強い覚悟を。
私の想いに応えるように、ポシェットのモンスターボールが震えた。
動け、私の体。
助けるんだ、彼らを！
「お願いリザードン！ほのうのパンチ！」
口づけしたモンスターボールから出てきた勢いで、リザードンが鬼に向かう。
不意を突いたであろうその攻撃は見事にヒットして、鬼を吹っ飛ばす。
炭治郎さんと禰豆子さんは、驚いたように目を開きリザードンを見る。
そしてゆっくり、私に視線を移動した。
「…もう、大丈夫です。私たちも戦えます。」
リザードンが吠える。そして、やってやろうぜ、とニヤリと笑う。
ほんと、私のポケモンたちはかっこよすぎる。
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作者名：さりー | 作成日時：2020年7月10日 21時
