第十一話 覚悟�� ページ32
次の日、炭治郎さんがまた蝶屋敷に来た。
昨日の夜の任務はみんな別の場所だったようで、今日は炭治郎さんひとり。
昨日蝶屋敷から出る前に善逸さんが、嫌だぁぁぁぁ！と泣き叫んでいたのを思い出す。
しのぶさんにものすごく圧をかけられていたなぁ…。
「A、出かける準備をしてくれないか？」
戻ってきた炭治郎さんは、哀しそうにそう言った。
なんだろうと思って準備をして玄関に行くと、しのぶさんとカナヲさんがいた。
私を見つけると、カナヲさんは表情を変えず頭をなでてくれる。
その手はなぜか辛そうに感じた。
そんなカナヲさんを見て、しのぶさんは少しだけ驚いたようにしたが、すぐに真剣な顔をこちらに向けた。
「Aさん。お館様からの伝令です。竈門炭治郎くんと共に南の方角へ行ってください。…初任務です。」
その言葉に、いろいろ納得がいった。
そしてカナヲさんをみると、やっぱり表情はあまり変わっていなくて。
でも、心配してくれている目をしていた。
覚悟は、ちゃんとしている。だから、大丈夫。
右手でカナヲさんの、左手でしのぶさんの手を握って、私はできる限りの笑顔をつくった。
「行ってきます。」
それが先ほどまでの出来事。
蝶屋敷を出ると、禰豆子さんの入った箱を背負った炭治郎さんが待っていて、並んで南に向かう。
炭治郎さんは眉間にしわを寄せたまま、話さない。
彼は優しい。
昨日鬼狩りのお手伝いの話をした時も、とても心配してくれた。だからきっと、今もどうしようと悩んでいるのだろう。
足手まといにだけはならないようにしないと。
どれくらい歩いただろうか、炭治郎さんの態度は変わらない。
彼には笑っていてほしい、だからお手伝いをするのに。
これじゃあ、思っていたのと違う。
私のせいで、困らせている。
だから、話したいけど私から話しかけられない。
気まずい雰囲気が流れている。
どうするべきか。どうしたらいいだろうか。
そんな時、バッと目の前に何かが現れた。
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作者名：さりー | 作成日時：2020年7月10日 21時
