第八話 鬼殺隊�� ページ22
痛みは来なかった。
代わりに聞こえた大きな金属音と、愛しい相棒の鳴き声。
驚いて目を開けると、そこにはアイアンテールで実弥さんの刀をうけるピカチュウの姿。
「ピカチュウ！」
私が声を上げると、実弥さんがバッと後ろに跳んで距離をとる。
「一体何がおこったのかな？」
見えていないお館様に女の子たちが説明をする。
それを横目にみながらピカチュウを呼ぶと、怒ったような声が返ってきた。
自分でボールから出たほど、きっと彼は怒っている。
ザワザワとする中、私の指示なくピカチュウはエレキフィールドを発動させた。
地に空間に電気が走る。でんきタイプの威力が上がるフィールド。
突然の事に他の柱の方々も刀を抜き始める。
まずい。
なんとかしなくては。
「ピカチュウ落ち着いて、私の声を聞いて！」
頬のでんきぶくろをバチバチとさせ、威嚇をやめないピカチュウ。
このままでは、バトルになってしまう。
バトルは大好きだけど、これは違う。
私はピカチュウに近づいて、優しくなでる。
「心配してくれたんだよね、ありがとう。でも、私は大丈夫だから、その人は悪くないから。だから落ち着こう、ピカチュウ。」
チラッと私を見て威嚇をやめるピカチュウ。
よかった。
私は彼を抱き上げ実弥さんに頭を下げる。
「驚かせてしまいすみません。この子は私のパートナーで、心配してくれただけなんです。どうか許してあげてください。」
「…俺はてめえを斬ろうとした。なんで謝んだよ。」
「あんな話、混乱せずに聞ける人はあまりいないと思います。皆さんの態度は正しい。どんな状況であれ、そんな人に敵意を向けるなんてことあっていいわけがありません。」
頭を上げて実弥さんの目をじっと見る。
ギロリとした目と視線が交わる。
なんだろう、さっきまでは恐怖しか感じなかったのに。今は何故か、恐怖を感じない。
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作者名：さりー | 作成日時：2020年7月10日 21時
