第六話 鬼�� ページ18
「っ、禰豆子！」
その姿を見て、炭治郎さんが慌てて立ち上がる。
そんなことは、私にとってはどうでも良かった。
頭に置かれた手の感触。
あの時と同じ。
とても優しくて、心が温かくなる。
頑張ったねって言ってくれているような手。
今も、私の事を心配してくれている感じがする。
禰豆子さんの手が頭から左頬へ移動する。
冷たくて気持ちいいその手から、何故かとてもあたたかさを感じる。
止まらない涙が彼女の手を濡らしていく。
「禰豆子、手を離すんだ。」
炭治郎さんの哀しそうな声に、禰豆子さんの手が私から離れようとした。
だめ。まって。
離れないように、禰豆子さんの手に自分の手を重ねる。
少し驚いたような気がした禰豆子さんに、私は口を開いた。
「っ、やだ、離れないで…。」
禰豆子さんからは、あの時の鬼のように嫌な感じは全くしない。
だからきっと、鬼であったとしても、普通とは違うはず。
怖い？いや、怖くなんてない。
「禰豆子さんは、違うよ。だって、こんなにも優しくて、あたたかくて…。こんなお姉ちゃん、ほしかったなって、私…。」
触れていた手を離し、目の前にいる禰豆子さんにぎゅっと抱き着く。
私の気持ちが、少しでも伝わるように。強く。
「私、禰豆子さんが大好きだよ。」
抱き着いたから彼女の表情は見えない。
でも、同じくらい力強く抱きしめ返してくれる。
ありがとう、そんな気持ちが伝わってくる。
ふと、背中に別のぬくもりを感じた。
「……ありがとう、A…！」
私を後ろから抱きしめた炭治郎さんは、涙を隠すように私の首に顔を埋めた。
きっと、わたしには量り知れないほどの苦難が二人にはあったことだろう。
ここにいる間、少しでも彼らの力になりたい。
私はしばらく、涙が止まらなかった。
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作者名：さりー | 作成日時：2020年7月10日 21時
