第六話 鬼�� ページ16
鬼――、主食“人間”。
人を殺して、食べる。
身体能力が高く傷などもたちどころに治る。
体の形を変えたり、異能を持つ鬼もいる。
太陽の光か、特別な刀で首を斬り落とさない限り殺せない。
鬼殺隊――、生身の人間。
政府から認められていない鬼を狩る組織。
特別な刀と特別な呼吸法を駆使し、人を守るため戦う。
衝撃だった。
確かにあの時、あれは食うと言っていた。
鬼…。思い出すだけで恐怖が蘇る。
「…Aちゃん。」
私の手を握る善逸さんが、少し力を強める。
震えが少しマシになった気がする。
包まれていた右手を動かし、善逸さんの手を握り返し自分の胸へ持っていく。
「っ、Aちゃんんん！？」
顔を真っ赤にして慌てる善逸さんを視界に入れつつ、私は彼らに伝えなければいけないことを思い出していた。
「あの…、」
「どうした？」
眉を下げ、心配そうに顔をのぞく炭治郎さん。
「文逸うるせぇ。」
被り物のせいで表情がよく見えない伊之助さん。
「いやだって！ね！？」
さらに顔を赤くする善逸さん。
そして、箱に入ったまま少しだけ顔を見せる禰豆子さん。
あの時、この人たちに会えたから、今私はここにいる。
大事なことを伝えそびれていたんだ。
「助けてくれて…、ありがとう、ございました…。」
命があることに感謝して、出会えたことに感謝して。
泣きたくなるのを必死におさえて、私は精一杯の笑顔をむけた。
目を見開いた炭治郎さんは、すぐに優しい笑顔を返してくれた。
「Aに出会えてよかった。」
この人は、どうして私のほしい言葉がわかるのだろうか。
胸が締め付けられるような感覚を覚えた時、善逸さんの手が私から離れた。
驚いて善逸さんを見ると、バッと立ち上がって、走り出した。
「可愛すぎるよぉぉぉぉぉ！！！ほんっと可愛いなあぁぁぁぁぁ！！」
そんな事を叫びながら、庭をかけまわる。
そんな善逸さんに、なんだあいつ、と言いながら俺の方が早いぜ！と自分も走り出す伊之助さん。
ポカンとそんな二人を見ていると、ため息をついた炭治郎さんがまた私を見た。
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作者名：さりー | 作成日時：2020年7月10日 21時
