第五話 蝶屋敷�� ページ14
体を看てもらいながら、私の経緯をお話しした。
炭治郎さん達は別室にいるため、今はしのぶさんとふたりきり。
私の話を聞いた彼女は、微笑みながら私に言った。
「その話、安易に私にしてよかったんですか？」
「え？」
「私とあなたは初対面で、私が何者か知らないでしょう？もしかしたらその話であなたを利用する悪い人かもしれませんよ？」
彼女の言うことは最もだと思う。確かに、警戒することは自分を守ることにつながる。
顔は優しく笑っているのに、それがなぜか私を不安にさせる。
黙ってしまった私に少しため息をつき、彼女は言葉を続ける。
「少しは人を疑って、警戒したほうがいいですよ。」
この瞬間も何するかわからないでしょう、と笑う。
一瞬、恐怖を感じる。でも、私の体を触るその手は優しくて。
ああ、やっぱりと恐怖がなくなった。
「あなたはそんな事しません。」
「…わかりませんよ？だって、」
「わかります。だって、こんなに優しい手の人が悪い人なわけないですもん。」
私が彼女の手を握ると、驚いたような顔をする。
「それに、炭治郎さん達の信頼する人ですから、だから信じてお話ししたんですよ。」
ポカンとして私を見る。私はまた何かまずい事を言ってしまっただろうか。
少しの間の後、彼女はとても綺麗に笑った。
その顔は、さっきの笑顔とはなにか違くて、こっちのほうが好きだなと感じた。
「なんというか…ふふ。信じてくださってありがとうございます。私も、あなたのお話を信じます。」
その言葉が嬉しくて。握り返してくれたその手を見つめて微笑んだ。
「ただ、この事はお館様へ報告しなければなりません。そうなると、心の問題ではどうにもならないでしょう。…気を悪くしてしまうかもしれませんが、あなたの血を、調べさせてもらってもよろしいですか？」
眉を下げて真剣な顔をするしのぶさんに、私はゆっくり頷いた。
お館様というのがどんな人なのかわからないが、この際任せてみよう。
大丈夫。私はひとりじゃない。
ありがとうございます、としのぶさんは採血の準備を始めた。
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作者名：さりー | 作成日時：2020年7月10日 21時
