第一話 はじまりのポケモン�� ページ2
歩き始めて５分くらいたっただろうか。
真っ直ぐの道が続いていて、特に何も起きない。
ウワサはウワサでしかないのだろうかと、疑問に思い始めた頃、少し前を歩いていたピカチュウが何かに反応して立ち止まった。
振り返って私を見た彼は、この先に何かいる、そう言っている気がした。
深呼吸をして再び足を動かす。すると一瞬ピリッと体に痛みが走った。
まわりには変わらずなにもない。
気のせいと思い前へ進むと、大きく開けた場所に出た。
そこで、私たちは目を見開いた。
「誰だ。ここへは結界があってこられないはずだが。」
ずしっとした重い言葉が頭に響く。これは…テレパシーか。
まさかこんなところに居るとは誰が思うだろうか。
「娘、聞こえているのか？」
はじまりのポケモンといわれる伝説の……アルセウスが。
ドキドキと心臓が早まるのを感じながらゆっくりと口を開く。
「私はA。こっちはパートナーのピカチュウ。プラターヌ博士の頼みでこの洞窟を調べに来たの。途中に結界なんてなかったと思うけど？」
「…そうか…。」
それだけつぶやくとアルセウスは目を閉じた。
なんだか元気がないような気がするが、見たところケガはしていないようだ。最も、体が大きいので見えるところは、だが。
何故、アルセウスのような幻のポケモンがこんな所に居るのだろうか？
「アルセウス、何か私に出来ることはある？」
「……何故だ。」
再び目を開いたアルセウスと視線がぶつかる。
「なんだか元気がないように見えるから。こんなところに居るのには何か理由があるんでしょう？」
彼は私から目を離さない。何か変なことを言っただろうか？
返答がないので不安がよぎる。
「えっと…アルセウス？」
「Aと言ったな。」
横たわっていたアルセウスが立ち上がる。
さっきまで見えていなかった部分に傷があるのが見えた。
「やっぱり！今きずぐすりを…！」
「A。」
腰についているポシェットに手を伸ばすが、名前を呼ばれた為手が止まる。
「結界を破って来たお前たちに頼みたいことがある。」
そして彼はゆっくりと語り始めた。
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作者名：さりー | 作成日時：2020年7月10日 21時
