唯一無二の宝物 14 ページ19
動きがあったのは、それから1時間半経った頃。
どうやら破水したらしい。
Aの悲痛な声は近くの部屋にいた隊長達の耳にも届き、動揺が走る。
イゾウも、今にも飛び出して行きそうになるのを何度も必死で堪えていた。
先程よりもずっと短い頻度で響き、その悲鳴は時折船長室にまで届いているらしく、白ひげは何度も時計を確認し、吉報を待っていた。
『オギャー！オギャー！』
産声が上がった。
それはモビー・ディック号全体に響き渡った。
待ち侘びた瞬間に、そこかしこで歓声や感涙に咽ぶ声が聞こえている。
｢男の子よ！男の子が産まれたわ！｣
ナースの知らせを受け、イゾウは部屋を飛び出した。
マルコの目には薄らと涙が浮かんでいた。
｢A！！！｣
医務室に飛び込んだイゾウが目にしたのは、産まれた赤子を慈しむような目で見つめる、Aの姿。
我が子を腕に抱き、疲れ切った様子の彼女を、子どもごと抱き締めた。
｢ありがとう。本当に、ありがとう。お嬢も、お子も、頑張ったな…！｣
｢ふふ、イゾウったら、泣いてるの？｣
｢バカ言うんじゃねェ…っ！｣
彼の目に浮かぶ涙を、Aは微笑み、そっと指で拭う。
するとイゾウは人目を憚らず、彼女に口付けた。
わぁ、と上がる声も、どうやら聞こえていないらしい。
｢イゾウも、抱いてみる？｣
｢いいのか？｣
｢もちろん。いいでしょ？クレア。｣
｢ええ、もちろんよ！あ、それならイゾウ隊長、赤ちゃんの計測をしたいので、後で奥の部屋に連れて来てもらえますか？｣
｢分かった。ありがとう。｣
そしてAからイゾウの腕に、子どもが渡された。
腕の中で泣く我が子に、優しい眼差しを向ける彼を、同じような表情でAは見ていた。
それからクレアに連れられ、イゾウは子どもを抱き、奥の部屋へと移った。
｢あの、イゾウ隊長。Aはまだ処置が残ってるので、計測が終わったらそのまま赤ちゃんを見ててもらえると助かります。｣
｢ああ、別に構わない。だが、おれだけで平気か？｣
｢いつでも呼んでもらえれば誰か行くので大丈夫ですよ。じゃあ、私は行きますね。｣
軽く注意事項だけ聞き、イゾウは子どもと二人きりになった。
こうして赤子を抱くのは弟以来だと思い出すイゾウ。
そして隣の医務室では、Aの後産が行われている。
後産自体はスムーズに終わったものの、出血が多かった。
結果的に貧血で済んだが、危うく命に関わる所だったようだ。
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雨音(プロフ) - メルディアナさん» 甘いのが続いたので、嫉妬系にしてしまいましたが、楽しんでいただけて良かったです！甘々も近いうちに書きますね。ありがとうございました！ (2022年7月21日 7時) (
レス) id: 95f98cf5bb (このIDを非表示/違反報告)
メルディアナ(プロフ) - この話も良かったです。もっと甘いのも見てみたいです (2022年7月21日 0時) (レス) @page34 id: 4fe2c4e2da (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - メルディアナさん» いつもありがとうございます♪承りました！ (2022年7月17日 21時) (レス) id: 95f98cf5bb (このIDを非表示/違反報告)
メルディアナ(プロフ) - お風呂でイゾウに抱かれる話をみたいです。 (2022年7月17日 15時) (レス) id: 4fe2c4e2da (このIDを非表示/違反報告)
メルディアナ(プロフ) - とっても楽しかったです。ありがとうございました！ (2022年7月16日 23時) (レス) @page26 id: 4fe2c4e2da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨音 | 作成日時：2022年6月29日 23時
