唯一無二の宝物 12 ページ17
＿No side
早朝、医務室の扉を蹴破らんばかりの勢いでAを抱えたイゾウが飛び込んできた。
陣痛だと思わずに耐えていたのを、痛みの間隔が規則的な事に気付いたイゾウが、彼女を抱え、身体に触らない程度に急ぎ、医務室へ駆け込んだのだ。
｢これは本陣痛ね！急いで新しいタオル、ありったけ持って来て！｣
｢輸血はストック何個あるの！？いざとなったら貰えるように、同じ血液型の人達にも声掛けておいて！！！｣
｢誰か、今すぐ船医長起こしてきて！｣
リアとクレアを中心に、ナース達が慌ただしく動き出した。
ベッドへ寝かされたAはイゾウの手を握り、側にいたリアに声をかけた。
｢リア、さん…。イゾウは、側に、いれない、の…？｣
｢多分…そうなると思う。でも、もうしばらくは船医長も許してくれるはずよ。｣
｢そっ、か…。ありがとう、リアさん。｣
痛みが引いてきたのを確認した後、リアは席を外した。
気を利かせてくれたのだろう。
二人は彼女の後ろ姿にお礼を言った。
｢水でも飲むか？｣
｢ううん、大丈夫。ただ、側にいてほしい。｣
｢いるさ。最後まではいられないがな。｣
｢ふふ、それは、残念ね。｣
｢お嬢一人に頑張らせるのは…辛いな。側にいてやる事しか出来ねェ。こういう時、男ってのは無力だな。痛みや苦しみを背負うのは女ばかりだ。｣
｢でもこれは、幸せな痛みよ。イゾウと私の、かけがえのない宝物に、もうすぐ会えるんですもの。これ以上に幸せな事はないわ。｣
｢お嬢がいて、お子がいて、おれは幸せ者だねェ。ただ、これだけは言わせてくれ。二人とも元気ならそれでいい。それ以上は望まねェ。だから、死ぬなよ。｣
｢イゾウ…。｣
出産は命懸けだ。
それを分かっているからこその言葉だった。
Aは身体を少し起こし、イゾウの後頭部に手を回し引き寄せ、唇を重ねた。
大丈夫だと、伝えるように。
｢ちゃんと二人で、貴方の元へ戻ってくる。私の帰る場所は、イゾウの所だけだもの。｣
｢絶対だぞ。頑張れ、A。側にはいてやれねェが、おれはいつでも、お嬢と共にある。｣
｢ありがとう。心強いわ。…うっ、はぁ…っ！イゾウ、お願い…。もう一度、キスして？そしたらきっと頑張れるから。｣
｢ああ…。愛してる、A。｣
｢んっ…。｣
何度か口付けを交わし、最後に抱き締め合うと、イゾウは船医長と入れ違いに医務室を出ていった。
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雨音(プロフ) - メルディアナさん» 甘いのが続いたので、嫉妬系にしてしまいましたが、楽しんでいただけて良かったです！甘々も近いうちに書きますね。ありがとうございました！ (2022年7月21日 7時) (
レス) id: 95f98cf5bb (このIDを非表示/違反報告)
メルディアナ(プロフ) - この話も良かったです。もっと甘いのも見てみたいです (2022年7月21日 0時) (レス) @page34 id: 4fe2c4e2da (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - メルディアナさん» いつもありがとうございます♪承りました！ (2022年7月17日 21時) (レス) id: 95f98cf5bb (このIDを非表示/違反報告)
メルディアナ(プロフ) - お風呂でイゾウに抱かれる話をみたいです。 (2022年7月17日 15時) (レス) id: 4fe2c4e2da (このIDを非表示/違反報告)
メルディアナ(プロフ) - とっても楽しかったです。ありがとうございました！ (2022年7月16日 23時) (レス) @page26 id: 4fe2c4e2da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雨音 | 作成日時：2022年6月29日 23時
