唯一無二の宝物 11 ページ16
＿No side
妊娠して9ヶ月が過ぎ、来月には出産を控えた頃。
お腹が大きくなり、動きづらくなってきた彼女を、イゾウは献身的に支えていた。
妊娠が発覚してから続けている、妊娠線予防の為にクリームを塗ったり、髪の手入れも欠かさない。
少しでも運動をと船内を歩く彼女にいつも付き添っていた。
それでも彼にも仕事は変わらずある。
そんな時は手の空いている者達が声を掛けたり、一緒に散歩したりと気にかけてくれていた。
妊娠後期は貧血になりやすいと聞き、鉄分不足にならないようにとサッチの料理にも熱が入っているし、皆にとっても彼女を気にかける事は既に生活の一部になっているようだ。
｢精が出るねい。｣
｢あ、マルコさん。ちょっとでも動いていた方がいいって言ってたから、自分の為にもこの子の為にも、頑張らなきゃね。｣
｢でも無理はするなよい。｣
｢分かってる。…っ、ちょっと、座るわね。｣
｢大丈夫かい？張ってきたか？｣
｢うん、少し痛い、けど…休めば大丈夫。｣
｢ちょっと診させてもらうよい。｣
｢ん…ありがとう。｣
木箱に腰掛けさせたマルコは、首から下げていた聴診器を手にする。
簡易的な診察をするこの光景も、近頃ではよく目にする光景だ。
｢お、蹴ってるねい。ははっ、元気いっぱいだなァ。｣
お腹に手を当て、マルコだよい、なんて笑って自己紹介している。
ちなみに、サッチやラクヨウなどなど…同じ事をしている船員達が大勢いる訳だが、それを見た人達にとっては信じられないような光景だろう。
だがこれは、ほぼ毎日、各所で見られる光景である。
彼女によると、イゾウはもちろんの事、よく会う事の多い人達…例えばマルコやサッチ、白ひげの声がすると反応するらしい。
大勢による声掛けも、意味のある事のようだ。
｢ふふ、マルコさんに会えて喜んでるのよね。もうすぐ会えるわよ。だから、元気に産まれてきてね。｣
｢経過は順調だし、あと少し、頑張れよい。｣
｢ええ。いつもありがとう、マルコさん。｣
マルコと別れた彼女は、その足で船長室へと向かう。
それもまた、彼女の日課である。
｢父様、Aです。｣
｢待ってたぜ、愛娘よ。｣
今日あった事、昔の冒険の話、産まれてくる子の話…。
会話は尽きる事なく、イゾウの仕事が終わり、迎えに来るまで続くのだ。
｢オヤジ、入るぜ。お嬢を迎えに来た。｣
｢おかえりなさい、イゾウ！｣
手を繋ぎ船長室を出る二人を、優しい眼差しで見送るのも毎日の事である。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 178人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雨音(プロフ) - メルディアナさん» 甘いのが続いたので、嫉妬系にしてしまいましたが、楽しんでいただけて良かったです！甘々も近いうちに書きますね。ありがとうございました！ (2022年7月21日 7時) (
レス) id: 95f98cf5bb (このIDを非表示/違反報告)
メルディアナ(プロフ) - この話も良かったです。もっと甘いのも見てみたいです (2022年7月21日 0時) (レス) @page34 id: 4fe2c4e2da (このIDを非表示/違反報告)
雨音(プロフ) - メルディアナさん» いつもありがとうございます♪承りました！ (2022年7月17日 21時) (レス) id: 95f98cf5bb (このIDを非表示/違反報告)
メルディアナ(プロフ) - お風呂でイゾウに抱かれる話をみたいです。 (2022年7月17日 15時) (レス) id: 4fe2c4e2da (このIDを非表示/違反報告)
メルディアナ(プロフ) - とっても楽しかったです。ありがとうございました！ (2022年7月16日 23時) (レス) @page26 id: 4fe2c4e2da (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雨音 | 作成日時：2022年6月29日 23時
