幼馴染でアイドルの君と､【無限大・緑】

幼馴染の君と、キスと認識。 ページ9

｢優しいキスと激しいキス、どっちが好きですか？俺はどっちも得意です｣

.......

｢A〜もうちょっとで飯できる〜｣


今日も勝手に押しかけてご飯を作っている幼馴染。
ご飯ができる間、私はソファに座って、幼馴染が47都道府県を回っているライブのレポートを見ていた。

その中の一つに、あの発言があって。


｢忠義くん、どっちも得意なんだ｣


ポツリ、呟いた。
彼の役柄での発言かもしれない。

だけど、役柄じゃなくて彼自身が。
彼自身に、そういう経験があってもおかしくない。

ざわり。
少し、胸がざわつく。


｢A？なんかあった？｣

私の返答がなかったことに疑問を抱いたからか、彼は私のいるソファまでやってきた。
隣に座って、心配そうに私の顔を覗き込む。


｢忠義くんって｣
｢ん？｣
｢優しいキスと、激しいキス。どっちも得意なの？｣
｢……え？｣


突拍子もない私の発言に、彼の目が困惑でゆらゆらと揺れる。


｢あ、ごめん。感想で目にして、それで｣
｢Aは｣

少し、気になって。
そう続けようとした私の言葉を遮った彼は、私の肩に手を置いた。


｢Aは、それを聞いてどうしたいん？｣
｢どう……？｣


どうしたいって、なに？
ただ私は発言が気になっただけ。
得意なんだねって、それで終わるはずだったのに。

私の肩に置かれている、彼の大きな手に力が入る。
未だに彼の目はゆらゆらと揺れている。


｢A、俺は｣

するりと片方の手が私の頬を撫でる。


｢今ここで、教えてあげることもできるんやで｣


とても、優しい声だった。
私をじっと見つめる瞳は揺れていて。
頬に添えられた手は、ゴツゴツとしていて。


ざわり。
胸が、全身がざわついて。


｢ただよし、く｣
｢……なんてな。冗談やで。答えはAの想像に任せるわ｣

飯、すぐやから準備手伝ってや？そう言って離れていく忠義くん。

全身の力が抜ける。
彼に触れられた頬と肩が熱く感じる。


彼は、忠義くんは


｢おとこの、ひとだ……｣

今までに抱いたことのない感情が、新しく生まれた。


少し、彼に対する認識が変わった日のお話。

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