ロマンス・エフェクター △ ページ9
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「え、待って、これ来るくない?」
「あ。エレベーター動いた」
杉野くんの敏感すぎる菅田さんレーダーが発動した矢先、目の前のエレベーターが1階まで降りたあと、上を目指し動き出す。
「絶対くるくるくる!え、隠れる?」
「いーよ隠れないよ(笑)」
「気まずくなるのも違うか」
「うん。ほんとなんもないから、気まずくなる理由すらもないもん」
「かっなしー、ああ、俺いまなんかすごい悲しくなったわ、やだ」
私を見下ろしながら、痛そうな顔で胸をさする杉野くんの優しさがおもしろい。そんな痛そうな顔しなくてもいいのに、と思うくらい。
杉野くんの向こう側にあるエレベーターが到着を知らせる。
ドアの開いた先にやっぱりいるんだからすごい。
「まじだ(笑)」
「おはようございます、お疲れ様です」
「おつかれ〜」
菅田さんはチラッと私たちを見て通り過ぎる。
気まずくなる理由なんてなにひとつない私と菅田さんの間には、いつもと同じ空気が流れる。
「待って?お前らさ(笑)」
振り返った菅田さんが半笑い。
「杉野と嶋名が一緒におるってもう悪い予感しかない(笑)」
「菅田さん来るなって思いました」
「杉野くんの菅田さんレーダーほんと優秀だよ」
「ニヤニヤすんなよ(笑)来たらあかんのか(笑)」
「絡まれる前に、ほら乗って、杉野くん」
「なにが絡まれる前にやねん(笑)」
杉野くんをエレベーターに押し込んで、私も一緒に乗り込む。
「菅田さんじゃーねー(笑)」
「お疲れ様でーす」
呆れたように笑った菅田さんが背を向けたのを、ドアが閉まる隙間から見送る。
「Aちゃん」
「なに?」
「緊張した?」
「なんで?」
「俺の腕もげそうだから」
「ごめ(笑)」
「めちゃくちゃ緊張してんじゃん」
「なんか、菅田さんが知らない人に見えた」
「ちゃんと菅田さんだったよ」
「ね。なにも変わりなかったね」
「やっぱり心臓痛い?」
「心臓?(笑)」
「痛くない?胸というか心臓が。」
「杉野的にいうと心臓なんだね(笑)」
「なんて言うの?」
「心が痛いとかそんなんじゃない?」
「ああ、心か」
1階についたエレベーターからふたり並んで外へ出る。
杉野くんの言うように、心とかそんな曖昧なものじゃなくて、心臓が確かに痛い。
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haco.(プロフ) - 08さん» ありがとうでやす! (2022年6月27日 10時) (レス) id: 2f18d3cac7 (このIDを非表示/違反報告)
08(プロフ) - まってやす (2022年6月26日 0時) (レス) @page45 id: efa12fa1f1 (このIDを非表示/違反報告)
rinrin(プロフ) - haco.さん» あと少しのこのお話もまたいつか始まる菅田さんの物語も楽しみにしています!いつも素敵なお話ありがとうございます😌 (2022年6月15日 23時) (レス) id: 73e4a2e97b (このIDを非表示/違反報告)
haco.(プロフ) - ayakaさん» コメントありがとうございます☺️正直終われるのか?ってくらいに自分の中でまとまりのないストーリー展開になっておりまして(笑)終が2章にまたがるかもしれませんがもう少々お付き合い頂けますと嬉しいです☺️よろしくお願いします! (2022年6月15日 22時) (レス) id: 2f18d3cac7 (このIDを非表示/違反報告)
haco.(プロフ) - rinrinさん» rinrinさん!相も変わらず読んでいただけて嬉しいです。終わりに向かって徐々にお話も進んでいきますのでもう少々お付き合い頂けると嬉しいです☺️また菅田さんの後輩の物語書こうと思ってるので、その時も、是非ともよろしくお願いします。 (2022年6月15日 22時) (レス) id: 2f18d3cac7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:haco. | 作成日時:2022年5月16日 0時