大人になった手のひらで ページ31
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夜の公園に懐かしい、丸い背中が見えた。
「すーださん」
「お」
「あはは、菅田さんだ」
「菅田さんです。ん。これな」
「わー、やっと戻ってきた!」
「戻ってきた!ちゃうしな(笑)」
菅田さんの細い指にひっかかる紙袋をのぞけば、いつの間にやら紛失したアロハシャツみたいな、シャツ。
「あはは、ほんとですよね(笑)わざわざありがとうございます」
「おもくそ本人の家に置いていくあたりがお前やな(笑)」
「明日これ着ようかな(笑)」
「もうそんな時期やなあ(笑)」
「すっかり夏ですね」
「そう考えると結構会ってなかってんな」
「半年も会わないとさすがに嶋名ロスだったんじゃないですかー?」
「おーおー言うやんか(笑)」
「ちなみに私は淋しかったですよ!」
「ほな今日会えてよかったやんか」
「でも久しぶりに会っちゃうとまた少し淋しくなりますね」
「えーこわーなにー?今日めちゃくちゃ素直に喋るやんか」
「前からですよ」
「ほんまかいな(笑)」
「相変わらずいい鼻してますね」
ふいに手を伸ばして菅田さんの鼻に触れそうになって、やめた。
「成長してる!(笑)絶対触る流れやんか」
「久しぶりだとなんか触っちゃいけないような気がして」
「久しぶりやなくてもほんまは触らへんねん、普通(笑)」
「そっか(笑)」
夏の匂いのする風が、菅田さんの前髪をさらう。
雨の日は記憶に残りやすいだなんて、いつかそんな話をしたけど、夏の夜風に金色の髪をなびかせて、伏し目がちにギターをひく菅田さんの細い指先と、今も変わらない相変わらず綺麗な鼻先を思い出す。
「髪伸びましたね」
「ほんまに久しぶりのやつがする会話やんか(笑)」
「さすがにこれは久しぶり認定されますよね?」
「おん、するする(笑)」
「髪の毛結んでる菅田さんなんていつぶりですか」
「暑いねんてなーすきあらば伸ばすしな(笑)」
「菅田さんのシニヨンヘア好きです」
「そうなん(笑)初耳やわ」
「うそだー」
そうだった、そんな顔して笑う人だった。
なんて思い出の中の菅田さんとすり合わせながら、時間の経過をいたく感じて胸が苦しい。
今夜のことで、吉沢さんに大丈夫!なんて言ったけど、あの大丈夫は誰のためだったんだろう。
不安げに笑った吉沢さんのためだったのか、今にも泣いてしまいそうな私のためだったのか。
「元気してたん」
やさしい声が、やっぱり愛しい。
菅田さんのいない毎日に慣れ始めた頃に会いに来るなんて、そんなのずるいな。
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haco.(プロフ) - 08さん» ありがとうでやす! (2022年6月27日 10時) (レス) id: 2f18d3cac7 (このIDを非表示/違反報告)
08(プロフ) - まってやす (2022年6月26日 0時) (レス) @page45 id: efa12fa1f1 (このIDを非表示/違反報告)
rinrin(プロフ) - haco.さん» あと少しのこのお話もまたいつか始まる菅田さんの物語も楽しみにしています!いつも素敵なお話ありがとうございます😌 (2022年6月15日 23時) (レス) id: 73e4a2e97b (このIDを非表示/違反報告)
haco.(プロフ) - ayakaさん» コメントありがとうございます☺️正直終われるのか?ってくらいに自分の中でまとまりのないストーリー展開になっておりまして(笑)終が2章にまたがるかもしれませんがもう少々お付き合い頂けますと嬉しいです☺️よろしくお願いします! (2022年6月15日 22時) (レス) id: 2f18d3cac7 (このIDを非表示/違反報告)
haco.(プロフ) - rinrinさん» rinrinさん!相も変わらず読んでいただけて嬉しいです。終わりに向かって徐々にお話も進んでいきますのでもう少々お付き合い頂けると嬉しいです☺️また菅田さんの後輩の物語書こうと思ってるので、その時も、是非ともよろしくお願いします。 (2022年6月15日 22時) (レス) id: 2f18d3cac7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:haco. | 作成日時:2022年5月16日 0時