For example.【雪】 (ページ10)

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『言っちゃえばいいじゃん、
　父さんは多分喜ぶと思うけど』

　
「言わないよ、働きづらくなるでしょ」

　

　

　

　

　
　

　
蓮のお父さんはともかく、
他の先生にバレたりしたらかなり面倒だ

　

　

　

　
コネで入ったとか、贔屓だ、とか言われるだろうし
蓮の担当なんて絶対外されると思う

　

　

　

　
特に女の先生は色々うるさいんだから‥

　

　

　

　

　

　
『じゃあ何のためにここ来たんだし』

　
　
「勉強教える為よ」

　
『違うし』

　
「違わない(笑)」

　

　

　

　

　

　
せっかくお父さんのおかげでバイト出来てるんだから
ちゃんと仕事をしたいし、がっかりされたくない

　

　

　

　

　
『だってみんなに言っとかないとAちゃん狙われるじゃん』

　
「狙われる？」

　

　
『うん、長谷川先生とか、山本先生とか』

　
「そんなね、狙われてないから大丈夫」

　

　

　

　

　
半ば呆れながらそう言うと
彼は私が座っているイスごとぐるんと９０度回し、
自分のほうに向けた

　

　

　

　
「あっぶないな、」

　
　
『わかんの。
　あの人達、俺がAちゃんの事見てる目と同じ』

　
「どんな目？」

　
　
『好き、っていう目』

　

　

　

　
目線を合わせて私の目の奥までじっと見つめる彼

　

　

　

　

　

「別に、普通に接してるだけで何にも言われてないよ？」

　
『余計危険じゃん』

　
「みなさんちゃんと仕事仲間として接してくれてるの」

　

『あ、あとアイツ、最近Aちゃんが担当になったやつ』

　

　

　
まだ言うか(笑)

　

　

　
『アイツ絶対Aちゃんのこと気になってるよ』

　
「蓮だって、私じゃなくて綺麗な先生が新しく来たら気になっちゃうんじゃない？」

　

　
　

　

　
最早ふたりでただただくだらない世間話をしていると
ガラガラ、とドアが開く音が聞こえた

　

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