三度の飯も君もすき【d!短編】 (ページ7)

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ソーダ味[kn] ページ7

アイツと付き合っている。

最近それがプレッシャーとなってしまった気がして。
いつだって整った顔で、いつだって輝いている。
そんなアイツが彼氏で誇らしいと同時に、その彼女である自分の惨めな浅はかさが目についた。

ことあるごとに胸がどきりとする。

たとえば体育の授業で先陣をきってボールを操るアイツを見て。
たとえば他の男子と情熱的に映画の話をするアイツを見て。
たとえば空き時間に真面目な顔で本を読むアイツを見て。
たとえば忙しい時間をぬってたまには一緒に帰ろうやと笑うアイツを見て。

心がざわつく。足が浮くような感じがする。
恋してるんじゃん、と友人は言うけどそんな生半可な甘いものじゃなくて。

恋人が初めて出来たわけでもない。胸が高まることはあれどこんな感情になることはなかった。
沢山のものを嫌悪する。なんだかもう死んでしまいたいとさえ思う。マイナスな思考を恋とは呼べない。少なくとも私は知らないし恋だとは思わない。

「なんや何考えとん」
日焼けしたアイツが顔を覗き込んだ。相変わらず綺麗な顔だ。
なんでもないよ。コネシマはガリガリ君似合うなーと思って。
そうかと隣に戻ったコネシマの横顔を見つめる。ちっちゃな商店の前で並んだ制服姿の私達は、いかにも高校生だ。今を生きている、青春真っ只中の、恋人同士。

青春だねと店前を歩く老人が言う。未来があってええね。可能性があってええね。

そう、私とコネシマには未来が存在してしまう。無限の可能性を秘めてしまう。

私達は悲しいほど今を生きていて、そして今しかないのだ。永遠を信じられるほど、私は私に自信がない。一緒に居られる努力を怠ることは絶対にないけど、それでもこの関係は青春の１ページに過ぎないのであっていつかは途切れるものなのだ。予知に近い確信。

最近感じるプレッシャーは、それをどこかで諦めきれない故の感情なんだろう。
今しかないくせに、未来を考察して恐怖している。

(なんという浅はかさだろう)

あたりやんと少し嬉しげなコネシマを見て涙がでそうだった。