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阿 「Aちゃん、本当に大丈夫なの…？」
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あ 「全然大したことないです！
横になったら大分良くなりましたし、」
阿 「そっ、か。よかった。でも今日はちゃんと様子見て、ゆっくり休むこと！」
あ 「は、い。そうします、」
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私の体調を心配してか、優しい阿部先輩は荷物まで持ってくれる。それでいて家まで送ってくれるなんて。
好きな人と一緒に帰る。
そうして家まで送ってもらう。
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ずっとずっと、憧れてた。
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それも、阿部先輩に…
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こんなの、絶対に嬉しいはずなのに。
今はそうは思えなかった。
頭の中では、阿部先輩じゃない他の人のことでいっぱいだった。
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『…あ、のさ、俺ね、』
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ねぇ、深澤先輩。
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先輩はあの時、私になんて言いかけたんですか…？
どうして都合が悪くなるとすぐ私の傍を離れて行ってしまうんですか。
それはやっぱり"紗南さん"が居るからなんですか…
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阿 「…」
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隣を歩いている阿部先輩の足がピタッと止まって、私の方を見つめる。
阿部先輩のその瞳は出逢ってから一番真剣な瞳だった。
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阿 「…ふっかからAちゃんが倒れたって連絡が入った時、気付いたら無我夢中で走ってた、」
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あ 「えっ…」
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阿 「考えるよりも先に身体が動いててね、こんなこと俺自身も初めてで正直すごく戸惑ってる。」
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阿 「でもね、それくらいAちゃんに何かあったらどうしようって怖かったんだ…」
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阿部先輩は私の肩に優しく触れると、にこり微笑む。
互いに視線が交じり合うと
先輩の大きい手が私の手を包み込んだ。
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阿 「俺ね、自分が思ってるよりもずーっと、Aちゃんのことが気になってるみたい…」
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阿部先輩が思うよりも私のことを気になってる？
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先輩が、私を…？
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あ 「…えっ、？！」
阿 「ふふ、これ一応宣戦布告ね。笑だからこれからはもっと意識してもらえるように頑張るから、」
あ 「その、えっと、」
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じゃあまた、タイミングよく家の前に着いた先輩が私に背を向けて歩いて行く。
思いもよらない阿部先輩からの言葉に私はただその場に立ち尽くすことしか出来なかった。
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作者名：くろーばー。
| 作成日時：2021年8月16日 10時
