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だからこそ、深澤先輩に伝えたくって…
最後の望みじゃないけれど伝えたかったんだ。
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あ 「…深澤先輩、私、先輩に話したいことがあります、」
深 「うん。」
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あ 「阿部先輩に誘われたんです…
デートに…日曜日、伝えたいことがあるって、」
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多分この時の私は
一部の望みにかけていたんだと思う。
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もしかしたら、先輩は私を引き留めてくれるかもしれない。
悲しい表情で行かないで、ってそう言ってくれるかもしれない。
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そう思ったんだと思う。
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だけど、現実は違ったんだ…
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深 「やったじゃん。」
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あ 「…えっ、」
深 「あれだけ想いを寄せてた阿部ちゃんにデートに誘われたんでしょ…？良かったね、Aちゃん。よく頑張ったね、今日までずっと。」
あ 「私は何も、深澤先輩が居たから私は、」
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深澤先輩が居なかったら私は阿部先輩に話しかけることすら出来なかった。
臆病な私から変わることなんて絶対に出来なかった。
全ては、全部は、目の前に居る貴方から始まった。
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咄嗟に先輩の手を掴もうと
伸ばしたこの手も彼の言葉に引っ込んだ。
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深 「んーん。俺はなんもしてないよ…？全部Aちゃんの頑張りじゃん。俺、今すっごく嬉しいな…だって、ずっと想い続けてたもんな、阿部ちゃんのこと。」
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違う、そうじゃないんです。先輩…
私が今好きなのは阿部先輩ではなくて…
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深 「…もう俺の力なんて要らないね。」
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あ 「えっ、」
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眉を細めて、優しく微笑んだ深澤先輩は一度息を吐くと私を見つめる。そして、言った。
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深 「この場所で会うのはもう終わりにしよう。今から俺とAちゃんは普通の先輩と後輩に戻るの。恋の相談相手じゃなくって。」
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あ 「…そんな、」
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深 「ほらぁ、そんな悲しい顔しないで…？俺たちが隠れてこの場所で会ってるの知ったら阿部ちゃん悲しんじゃうから、ね…？」
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『Aちゃんなら、きっと大丈夫。俺と出逢った頃よりずーっと強くなった。俺の手を借りなくったって一人でやってける。』
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深 「…」
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深澤先輩の背中がみるみる遠くなって行く。
やだ。行かないで。って言えない自分がもどかしい。
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あ 「…深澤先輩、」
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作者名：くろーばー。
| 作成日時：2021年8月16日 10時
