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「…急に呼べない」
「は？」
「流れってやつがあるじゃん！」
「は？何だよそれ」
ジッと見つめるその目に負けて、スッと視線を逸らして誤魔化した。
自然の流れがある。
いきなりこの状況で呼ぶのは恥ずかしすぎてどうにかなりそう。
はい、呼んでみ？…で呼べたら苦労してない！
いやそもそも自然の流れって何だ？
流れ…はまああったのかもしれないけど避け続けた結果がこれだ。
とにかく恥ずかしさが勝る。
微妙な空気になって、何となくローテーブルに置かれた缶ビールを取ろうと手を伸ばした瞬間だった。
「じゃあ今からその“流れ”作ってやるよ」
ガシっと手首を掴まれ、そのまま肩をドン！と押されて、ソファに押し倒される形になった。
「ちょ、ちょっとっ！」
覆い被さる様にして櫻井が上から私を見下ろす。
もう片方の手首もギュッと掴まれ、完全に抵抗が出来ない状態。
「ん？何だよ」
「強引！」
「お前のせいだろ」
「はあ？」
色気のねぇ声、とふっと鼻先で笑った櫻井の顔が近づいてくる。
反射的に目を閉じれば、「呼ぶまでしない」と耳元で低く囁く声が聞こえた。
その声にカァっと顔に熱が集る。
キスされると思って目を閉じたのは失敗。
目を開ければ櫻井がニヤリと口角を上げて微笑んでいる。悪い顔だ。
ああ恥ずかしい。
「からかわないでよ」
「可愛い」
「もう」
私をジッと見つめてくる櫻井の顔が近い。その顔があり得ないほど色気の塊。
櫻井のハイスペックさに圧倒される。
もう櫻井のルックスが無駄に良すぎて嫌になるからやめてほしい。
ドキドキが止まらないのが悔しい…ムカつく…。
「照れんなよ(笑)」
「櫻井のせいだからっ！」
ギュッと掴まれていた手首が離され、今度は櫻井の胸の中に身体を抱き寄せられた。
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作者名：妃紀
| 作成日時：2018年2月25日 15時
