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ロビーで待ってる、と櫻井は言い捨ててからデスクを出て行った。
それから早急に仕事に取り掛かり、20分後に今日までにやらなきゃいけない仕事が終わってロビーへと向かった。
「お待たせ！」
ロビーにあるソファに腰掛けている櫻井を見つけて駆け足で向かえば、スマホを操っていた櫻井が私の声掛けに気付いて顔を上げた。
「遅い」
「これでも頑張ったの！」
少しだけ不機嫌な顔を見せながらソファから立ち上がった櫻井。
不機嫌な顔でさえ「かっこいい」と思ってしまうぐらい、私は櫻井にベタ惚れだった。
この感情が信じられないくらい。
「イケメン」にカテゴライズされている櫻井のハイスペックさに慣れていたはずなのに
“恋人”になった途端にその部分を過剰に意識してしまっている。
もはや“恋人”になる前に、どんな目で櫻井を見ていたのか思い出せないくらいだ。
「さっさと帰るぞ」
スタスタと歩き出した櫻井の後を追い、エントランスを抜ける。
相変わらず歩くスピードが速い。
頑張って追いかければ「あ、ごめん」と二歩先にいた櫻井が止まって、私の歩幅に合わせてくれた。
速く歩くのは無意識らしいけど、最近はそこを考慮してくれて私の歩幅に合わせてくれるようになった。
「俺んちでいいよな？」
「うん」
会社からは櫻井の家の方が近い。だけどときどき私の家にも行く。
今日はいつにも増して早く帰りたい雰囲気を纏っている櫻井。
歩幅を合わせてくれているのに、若干スピードが上がる。
だけどそれに気付いて微調整をしながら歩いてくれているのが可笑しくて頬が緩む。
櫻井の「可愛い」部分にくすぐったさを感じてキュンとする私は単純。
「飯どうする？デリバリーでいい？」
「いいよ、お寿司食べたい！」
電車に乗って数駅。駅から歩いて５分。
櫻井のマンションに着く。今日は金曜日。
バタン、と閉まったドアの音。
先に靴を脱いで部屋に上がったときだった。
「え、ちょっとっ…櫻井？」
後ろから回った腕が肩をギュッと抱き、その手が私のシャツのボタンを一つ外した。
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作者名：妃紀
| 作成日時：2018年2月25日 15時
