喫煙所は愛で溢れる ページ23
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「櫻井さん、今日の飲み会行きますよね？」
昼休憩になってすぐだった。
真後ろのデスクの櫻井に向かって声掛けをする可愛らしい声。
またか…と思いつつ、櫻井がどう切り返すのかを、こっそり聞き耳を立てて窺っていれば
「あ、ごめんね。俺の彼女がそういうの嫌うから行かないことにした」
一口流し込んだコーヒーをブハッと吹き出しそうになった。
…え、ちょっと待って！櫻井どういうつもり？！
私と付き合っていることをバラすのは面倒だし効率の悪いことだ、と言いそうな櫻井がそう言い返したことに驚きを隠せない。
「え？彼女…」
「飲み会の帰り、関係を迫られることが多くて彼女が心配してるんだよね」
「私はそんなつもりじゃ…」
プライベートは仕事に持ち込まない櫻井が、私情を挟んだ意図が分からずに困惑していたときだった。
ころころと椅子の音が聞こえて、ドンッと勢いよく背中に衝撃が走り、ビクッと驚いて咄嗟に後ろに振り返ろうとした瞬間
「こいつが嫉妬するんで飲み会はパスで」
ぽん、と頭の上に乗った大きな手。
「…え、彼女って」
パッと振り返れば、驚きを隠せない表情で私を見る可愛らしい女の子。
え、この女が？的な目線。…怖い。
「えっと、櫻井さんの彼女…」
「んじゃ、そういうことだから…ほら行くぞ」
「え、なに、ちょっと待って…！」
櫻井にグイッと腕を引かれてそのまま椅子から立たされて、驚いた顔をする女の子を残して、デスクフロアから出た。
状況が読み込めない。
そんな私を気にせず、櫻井は強引に腕を引っ張って、あっという間に喫煙所に辿り着いていた。
「櫻井…あのさ」
聞きたいことは山ほどある。
ドアを開けたと同時に口を開ければ
「あのくらい大胆じゃねぇと分かんねぇだろ」
ニヤリと口角を上げて、得意気に櫻井は笑った。
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作者名：妃紀
| 作成日時：2018年2月25日 15時
