17:自分の気持ち ページ17
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簡単なことなのにどうしてそのことに今まで気付けなかったのか。
「簡単でしょ？」
ふふって可愛く微笑む大野先輩は、やっぱり怖い。
その笑顔の裏に怖さを隠し持っている。
「意地悪したくなるんだよね〜、Aちゃんも翔ちゃんも不器用でさ」
パチリと絡み合った目が離れ、大野先輩は煙を一度吸い込んで灰を落とした。
「俺がアシストしなきゃ不器用なままで終わっちゃうじゃん」
あははって面白そうな表情を浮かべて大野先輩は笑う。
“好き”だと素直に言えないのはどうしてなのか。
不器用だと言った大野先輩の言葉に、ざわざわとした気持ちが生まれる。
櫻井はちゃんと私に“好き”だと言ってくれた。
それなのに私は素気無い態度で“バカ”って裏腹な言葉を紡いだあの日。
…バカだ、私。
何となくタイミングを逃して、そのままさらっと“恋人”になったけれど、自分の気持ちを素直に櫻井に伝えていないのはダメな気がする。
ううん、ダメだ。
「翔ちゃんはああ見えて単純だから、Aちゃんが“好き”ってちゃんと言ってあげればきっと上手くいくよ」
「…は、い」
「俺に言ったみたいにね、“好き”って言ったらいいの(笑)」
「えっ」
あ、困った？とふふって悪戯に笑う大野先輩は、「もう一つイイこと教えてあげる」とタバコをグチャッと押し潰して
“あの夜のこと話したらね、翔ちゃんに“二度と触れんな”ってキレられちゃった”
こそっと耳打ちされた言葉に、カアっと顔が熱くなった。
本当に小悪魔だ、大野先輩って。
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作者名：妃紀
| 作成日時：2018年2月25日 15時
