173:本当の気持ち ページ13
.
状況を読み込めずに呆然としていたが、ハッと我に返れば、櫻井が外面を隠さずに二宮くんに接していることに気付いた。
仕事モードじゃない、プライベートの櫻井。
爽やかさなんて皆無だ。というか怖い。こんな怖い櫻井見たことないぐらいだ。
「…だってよ、先輩」
「え？」
「離れなよ、俺から。俺を突き放してよ」
二宮くんとの距離感に危機感を感じていたはずなのに、私の身体は二宮くんに囲まれたまま。
背中はガラスの壁。顔の横には二宮くんの右手。
右に視線を逸らせば、少し離れたところから私たちを見ている櫻井の姿が見えた。
「櫻井さんもっと怒りますよ、俺が先輩にキスしてるとこ見たら。それとももっと怒らせたいですか？」
コソコソと小声で、囁くように言葉を零す二宮くん。
顔の距離は拳一個分。
今すぐ離れなきゃ、と頭では分かっているのに、身体が動かない。
「二宮…くん、あのね、」
「嫌いになってよ、俺のことなんか。偽善ぶった言葉なんかいらないから、嫌いになってよ」
私の言葉の続きを遮るように、二宮くんがそう言った。
さっきまで強気だったのに、急に弱々しくなった声色と口調。
二宮くんは、はあ、と一度深い息を吐いて、自分から離れて行った。
「やだなー先輩。誤解しないでくださいよ？」
「…え、」
「俺、先輩のことなんか最初から好きじゃないですから。先輩の反応が面白かったから、ちょっとからかっただけですよ。だから今までの俺の言葉、全部忘れてください」
いつもみたいに高い声で、二宮くんはニコニコ笑いながらそう言った。
表情の性急さ。声の切り替え。
瞬発的に変わりゆく二宮くんの本当の姿は、本当の気持ちは、一体どれだったのか分からなくなった。
どこからどこまでが本当なのか、それとも言葉通り、今までのことは全部嘘だったのか。
「二宮くん…」
「言いませんよ。最初から分かってましたから、二人が付き合ってることくらい。てか、俺べつに先輩たちの色恋なんか興味ないっすから」
早口で言い捨てるように言葉を口にしたあと、「それじゃ」と早急に喫煙所を出て行こうとした二宮くんを、このまま帰す訳にはいかず、気付けばその腕を掴み、止めていた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2381人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
妃紀(プロフ) - ともさん» コメントありがとうございます♪おそらく櫻井は好き過ぎて堪らない彼女に指一本触れさせたくないと思ってると思います(笑)6章も読んでくださると嬉しいですー！ (2019年10月22日 22時) (
レス) id: ad41dd4440 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - キスとハグだけ？私も翔さんと一緒で〜許せないかも(￣▽￣;)触られるだけでやっぱり嫌だ！私の愛も翔さん並に重いのかも(笑) (2019年10月19日 19時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
妃紀(プロフ) - 結城さん» やっと！仲直りしてくれました〜！本当にすれ違いが酷くて、ここまで辿り着くのに時間がかかりましたね(笑)今後も楽しんで頂けるように頑張ります(*´ω｀) (2019年6月23日 23時) (レス) id: ad41dd4440 (このIDを非表示/違反報告)
妃紀(プロフ) - みかぽさん» みかぽさん！お久しぶりです！コメントありがとうございます♪やっと仲直りしてくれましたよ〜！イチャコラして欲しいですね(´艸｀*) 二宮くんの気持ちを考えると切ないですが、きっと誰か素敵な人が現れるはずです…！更新頑張りますね♪ (2019年6月23日 23時) (レス) id: ad41dd4440 (このIDを非表示/違反報告)
結城(プロフ) - 仲直りきたー！ありがとうございます(;_;)この瞬間を待ってました(〃ω〃) (2019年5月21日 8時) (レス) id: 3f7c57052f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：妃紀
| 作成日時：2019年2月11日 21時
