159:困らせたい ページ39
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「私怒るって言ってる」
もう一度言葉を繰り返す。意識的に強めの口調で言った。
だけど二宮くんは「怒っていいっすよ」とまたずるいことを言って、私を困らせる。
「二宮くん、離れて？お願い」
今度は懇願するように言葉を口にした。
必死に離れようともがくけど、やっぱり抜け出せない。
二宮くんって見かけに反して強引だ。可愛くない。全然可愛くない。
「俺、先輩を困らせたいです」
「…どういうこと？」
「それで、嫌われたいです。先輩に俺のこと嫌いになって欲しいです」
耳元に口を寄せ、そう言葉を零す二宮くんの声のトーンがいつもよりもワントーン低くて
それだけで感じ取れる言葉の重みが痛いほど胸に響く。
「好きになってもらえないなら、嫌いになって欲しい」
「…どうして？」
「その方が苦しくないから」
耳元で紡がれる言葉が、胸をきゅうっと締め付ける。
二宮くんの気持ちは、受け取れない。この先もずっと。
だからって、今すぐに嫌いになるなんてことは出来ない。
二宮くんのことは恋愛感情ではないけれど、好意的に思っていたから、簡単に嫌いになることは出来ない。
「先輩が思ってるよりも、俺は先輩のことが好きです」
「・・・」
「好きです、Aさん」
「…ごめん」
「その言葉は聞きたくない」
「二宮くん、あのね…」
振り絞って声を出した途端、ギュウっと強く抱き締められていた身体が突然パッと離された。
驚いて目の前にいる二宮くんを見れば、二宮くんはハ、と一度短く息を吐き捨てて、私の目を見て言った。
「変なオトコに絡まれて最悪でしょ？俺も悪い女を好きになって最悪です。いっそのこと俺も先輩を嫌いになりたい」
苦しそうに顔を歪ませる二宮くんは、私が思っているよりも何倍も痛かった。
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作者名：妃紀
| 作成日時：2018年9月27日 20時
