◆157:白々しい男 ページ37
.
「は？いきなり何言ってんだよ」
「いいから答えてよ」
「あのさ、何で今そういう話になるわけ？」
どうしてそういう言葉が、今この瞬間、この場所で出て来たのか理解が出来ない。
そのフレーズに繋がる道筋が見えなくて、Aの気持ちが全く読めない。
「嫌いになったなら嫌いって言ってよ、呆れたなら呆れたって言ってよ」
「だから、」
「怒ってるんでしょ？私がバカだからムカつくんでしょ？ならそう言ってよ」
どうしてその話を今この場で引っ張り出して来たのか探りを入れようとしても、俺の言葉は聞こえていないのか、真っ当に質問の答えが返って来ない。
返って来ないどころか、逆にその質問が火種となって、Aを刺激しているようにも見える。
「ああもう…ったくさ、落ち着け。その話はまた今度するから」
何故か無性に感情的になっている彼女に、上手く頭が回らなくなる。
とりあえずAをこれ以上刺激しないようにと、そう声を掛けてみたものの、それは失敗だった。
「は？今度っていつよ！？いつになったら私の話聞いてくれるの？」
「俺にも俺の事情があんだよ」
「何よそれ、何の事情？分かるように私に説明して」
落ち着かせようと掛けた言葉が裏目に出て、更にイライラさせてしまった。
完全に逆効果。
これ以上会話を続けても空振りに終わるのは目に見える。
アルコールが入った状態では全く話にならない。
また場所が場所だ。公共の場での言い争いは大の大人として見っとも無い。
「とりあえずさ、」
「先輩たちこんなところでどうしたんですか？」
切り上げようと掛けた言葉を遮るように耳を抜けたその声は、男にしては高めのトーンで、聞き覚えのある響きだった。
それを合図に、Aから声の主へと焦点をズラせば、視界に入って来たのは案の定、二宮の姿。
不思議そうに首を傾げる二宮と目が合う。
緩く上がる口角は、やっぱり生意気さを醸し出していて、いつまで経っても好きになれない。
好きになりたくもねぇけど。
「べつにどうもしてないよ」
そんな二宮に吐き捨てるようにそう言って、この場から逃げるように立ち去った。
そもそも一体誰のせいで俺たちがこんな風になっているんだよ。
全ては白々しい笑顔を振り撒く、男のくせに可愛い面したコイツのせいだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2078人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：妃紀
| 作成日時：2018年9月27日 20時
