◆153:弱点 ページ33
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心地悪さを拭うために酒をひたすら飲み続ける俺。
ジョッキを傾けながら、ふと視線の先に見えたAの姿。
おい、アイツ…顔真っ赤じゃねぇか。ふにゃふにゃしてる。酔ったときの顔だ。
あー、無防備だからむやみやたらにそんな顔振り撒くな。
頼むから可愛い顔をオッサン相手に見せんな、セクハラされるぞ。
つか大野。見とけって頼んだのに全然Aのこと見てねぇ。
わざわざ隣に座らせた意味がない。これ以上アイツに酒を飲ませんな。
一課の課長ってAのこと気に入ってるよな、前も隣に座ってたことあった気がする。
あのオッサン、若い女の隣に座りたがるんだよな。お酌に付き合わせて、酔わせるのが好きなんだよ。
またAが酔いやすいから気に入ってる。ただのえろジジイかよ。
スマホをポケットから取り出し、テーブルの下でラインを開く。
大野とのトーク画面を開き、『Aに酒飲ませんな。あと席変われ』と素早く文字を打ち込んだ。
問題は大野がスマホを見てくれるかだけど。
メッセージを送って、俺の座っている椅子から７席分向こうにいる大野に視線を向ければ、シャツのポケットに入れていたスマホを手に取った大野の姿が見えた。
スマホを見るなり、チラッと俺の方に目を向けた大野はヘラっとしてる。
その表情からして忘れていたわけじゃなさそう。
こいつの性格の悪さ、腹黒さは見た目からは想像できない。
周りにバレないようにガンを飛ばすように睨めば、「わかったわかった」と頷きながら口パクでそう言う大野は右に座っているAに声を掛けた。
「Aちゃんのこと気になるの？」
「はい？何すか急に」
不意に、こっそり俺にだけ聞こえるように耳打ちしてきた左隣のミナミ先輩。
思わず顔を歪めてしまう。完全オフな表情。この女に今更隠すのも無駄だからいい。
「可愛い彼女が心配でたまらないって顔してるよ、櫻井くん」
ふふっとからかうように笑う先輩に、深いため息が零れる。
弱みを握られているようで腹が立つ。
この女も、あの男も、揃いも揃って性格が悪すぎる。
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作者名：妃紀
| 作成日時：2018年9月27日 20時
