◆150:教育係 ページ30
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「あ、武藤さんだ！こんばんは！」
やっとこの女との心地悪さを拭えたのは、相葉の明るい声によって。
俺の目の前の椅子に座った相葉。と、ミナミ先輩の目の前で相葉の横に座って来たのが、確か…松本潤。
一課のやつ。見たことはあるが話したことはない。
ペコッと小さく頭を下げられたから、頭を軽く下げ返す。
大野が言ってた通り、確かに綺麗な顔してる。ミナミ先輩が好きそうな正統派なイケメン。
そりゃこの女は大野より松本の顔の方が好きだろうよ。
「相葉くん…だっけ？」
「あ！はい！そうです相葉雅紀って言います！武藤さんのことはよく松潤から聞いてました」
えへへ、と笑いながら、ペコペコとミナミ先輩に頭を下げる相葉。
とりあえずこの女以外は後輩で脇が固まったからまあ良しとする。
相葉の酒癖はあまり好きではないけど。無駄に絡んでくるから。でも課長よりはマシ。
「え、松本くんなに話したの？」
「もちろんデキる上司だって言いましたよ」
「なにそれ(笑)」
ミナミ先輩は仕事がデキる。仕事面では尊敬できる。あくまでも仕事面だけ。
それ以外で尊敬できる点は一ミリもない。
「櫻井くんが相葉くんの教育係してるんだっけ？」
「ああ、はい。そうですけど」
「武藤さん聞いてくださいよ！もう櫻井さんスパルタなんですよねぇ〜怖いっすよ」
「えー、そうなの？意外」
ミナミ先輩がからかいを含んだ目で俺を見てちょっと笑った。
相葉のヤロー…余計なことを口にすんな。つか俺のどこがスパルタ？お前がミスばっかするからだろ。
一度ミスした箇所を何度もミスする相葉の学習能力の無さが問題だ。
見積書の桁を間違えたりなんていう初歩的なミスやら、コピー機の使い方が分からなくて印刷をミスったりやら。
まあまだ入社して三か月弱だけど。それでもちょっと手の焼ける後輩。
二宮が新入社員にしては仕事の効率が良いから尚更相葉の出来の悪さが際立つ。
「櫻井くんは新入社員の頃から優秀だったなぁ。私が一から十まで教えなくても仕事覚えてたし」
「え？武藤さん櫻井さんの教育係だったんすか？え、でも…あれ？武藤さん一課ですよね？」
「私櫻井くんが新入社員の頃は二課にいたの」
「へぇ〜そうなんすね！」
はあ…やっぱ心地悪い。昔の話をされるのはいい気がしない。
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作者名：妃紀
| 作成日時：2018年9月27日 20時
