◆141:メリット ページ21
.
「Aちゃんも今日来るの？」
「多分来ると思う。課長が誘ってたし」
「一緒に座る？」
「んなこと出来るわけねぇじゃん。上司の目が痛い」
「はは、まあそうだよねぇ」
会社を出て少し歩いたところ。駅前にある居酒屋が見えて来た。
各自仕事が終わり次第、お店に向かうという話。
俺がデスクフロアを出るとき、Aは社にいたからまだ来ていないはず。
「あ、こんなことあんたに頼みたくねぇけど、アイツが飲み過ぎないように見張っててくんねぇ？」
「え？いいの？俺の隣座らせても？」
「すげぇ嫌だけど、あんたにしか頼めない。しかもあんまり酔わせたくないから」
俺がAの傍にいるのは上司の目があるし、だからといってまたアイツが酒に飲まれるのが心配だ。
こういう飲みの席で上司やらのお酌に付き合わされて何度か泥酔させられてたし。
大して飲めないのに断れずに無理して飲むAの優柔さ。
いっそのこと禁酒して欲しいぐらいだ。…って言ったらまた束縛激しい男に拍車かかるか。
「ふふ、酔った顔可愛いもんねぇAちゃん」
「あ？」
「もう怖いって(笑)ちゃんと見張ってあげるからさ」
「余計なことすんじゃねぇぞ」
「ハイハイ。もういい加減俺を信じて」
「信じられるかよ」
目的の場所に着いて店に入れば、うちの課長を含め数名の顔触れ。
まだあまり集まっていない様子。
来た人から自由に座れ、と課長に言われて迷わず隅の席に腰掛けた。
仕事上の付き合いだと言っても今日はあまり気分が優れない。
表面上の人付き合いをこなすのも、会社で有益に過ごすために必要だ。
そういう意味で自分にとってはメリットだとは思う。飲み会という場で上司との仲を深められる。
様々なことを考慮して、上司の機嫌を取るために一応は参加することにしたけど、すこぶる俺は機嫌が悪い。
下手したら外面を崩して、感情に突っ走る可能性がある。
悠長に愛想を振り撒けるほどの心の余裕がないから、なるべく輪の外側に。
「櫻井くん、隣いい？」
こっそり佇むことに決めたのにも関わらず、そう声を掛けてきたのは、無駄に美人なあの女だった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2078人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：妃紀
| 作成日時：2018年9月27日 20時
