◆140:エゴイズム ページ20
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「…で、素直になれたの？」
エントランスを抜けて、大野と一緒に駅前の居酒屋へと向かう道中。
やや呆れ気味に大野がそう問い掛けて来た。
その切り出しから考えて、この前の話の続きか。
「まだ話すら出来てない」
「もうさ、好き過ぎて病むくらいなら別れたら？」
「は？何でそうなるんだよ」
「翔ちゃんの重たさは異常だってば。頭の固さも異常だし。そもそも翔ちゃんは何に怒ってんの？」
俺には理解出来ない、って顔してる。理解して欲しいわけじゃないから別にいいけど。
自分でも自分の思考回路を全て理解出来ていないし。
俗に言う、自分が“重たい男”である自覚はあまりない。というか認めたくないだけだ。
根本として俺自身が“重たい女”が嫌いだから、自身がそうだということを認めるのは理にかなわない。
客観視すれば自分がそうであるとは気付いているけど。
ただ、認めたくないというプライドが邪魔をする。頭の固さはどうにもならない。
「危機管理の無さと鈍感さと隙の多さ」
何で俺が“重たい男”になったのか。考えて見ればアイツのせいだ。
アイツはとにかく隙があり過ぎる。それを自身が分かっちゃいない。
その事実に無性に腹が立つ。そして知らぬ間に狩猟本能を掻き立てられている。
これまで受け身な恋愛ばかりしていたからなのか、本能を刺激させられる恋愛に溺れてしまっている自分を受け入れることが怖いんだと思う。
「もう許してあげなよ。翔ちゃんが寛容な心を持ってれば喧嘩する必要ないでしょ？」
「お前がそれ言えんのかよ」
「もう…センパイにお前って言うなって。しかもごめんって謝ったじゃん俺。束縛が激しすぎると嫌われちゃうよ？」
「悪かったなソクバッキーで」
「あ、認めてんだ(笑)」
「認めたくねぇけどな」
嫉妬も束縛も過度にしてしまうのは、自分本位な愛に溺れてしまうエゴイズムのせいだ。
多分、その考えを払拭する手段が、大野がしつこく言ってくる“素直になれ”ということだけれども。
分かっちゃいるのに恋愛というものはそう簡単に行くものじゃない。
はあ、好き過ぎるが故に喧嘩するなんてバカみてぇ。
好きが重くて苦しいなんてどういうことだ。
何だよこのバカみたいな恋愛。全然合理的じゃない。
兎にも角にも無駄が多すぎる。
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作者名：妃紀
| 作成日時：2018年9月27日 20時
