10:外面と内面 ページ10
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「キスさせて」
「はあ？ここで？」
握っていた箸を置き、顔を少し近づけてきた櫻井に焦っていれば、「冗談だろ」とふっと鼻で笑われた。
ああ、ムカつく。キスされるかもって浮かれた私がバカみたい。
されたらされたでこの場では恥ずかしいけど。恥ずかしいくせに期待しちゃってたけど。
プイッとそっぽを向くように視線を逸らせば、「可愛いやつ」とむにっと左頬をつままれた。
「いたっ」
「可愛い」
「もうなに」
「マジでAって可愛いよな」
「からかわないで！」
むにっとつままれた手を払えば、ははって櫻井が得意気に笑う。
普段意地悪するくせに、たまに櫻井は私を存分に甘やかす。
そのさじ加減が絶妙過ぎて心臓をドキューン！とぶち抜かれる。
「そういえば櫻井」
ドキドキと鼓動を速めていた心臓を落ち着かせ、そう口を開けば
ギロッとがんを飛ばすように私を睨んできた櫻井。
「あ、翔は…」
「よろしい」
鋭い目つきを瞬時に変えて、キラキラと大きな目をキュッと細めた。
その顔は爽やかな顔だ！ってまたドキドキとしてしまった心を落ち着かせ
「翔はさ」と話を切り出した。
「何？」
「相葉くんに対しても口の悪い感じで接してるの？」
「はあ？なわけねぇじゃん」
「え、でも何か」
「俺がこの口の利き方してんのはAと大野だけ」
「そうなの？」
「俺外面はよく見られてぇの、その方が効率いいじゃん」
じゃあ大野先輩はいいの？と訊けば、「あいつは例外」と瞬時に答えが返って来た。
確かに会社での櫻井は爽やかで愛想の良い雰囲気を纏っている。
合理主義の櫻井らしい答えだなって思いながら、残りの蕎麦を口に運んだ。
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作者名：妃紀
| 作成日時：2018年3月15日 19時
