35:嫌いと好き ページ35
.
「…翔？」
僅かな隙間から櫻井の顔を見上げるようにして見れば、
「お前それ反則だろ」とボソッと呟いたあと、バッと身体が離れて
「待たせてるから行くぞ」とスタスタと櫻井は歩き出した。
櫻井の後を追って行けば、レジの前で大野先輩の姿が見えた。
「俺の奢りだからお金はいいよ」
うふふっと少し上機嫌な大野先輩に「悪いですよ！」と言えば、「新入社員に払わすわけにもいかないし、翔ちゃんにも悪いことしちゃったから」と返された。
「え、」
「さ、出よっか？みんな待ってる」
突っ立っていれば、早く、と促されて慌てて店の外に出た。
「大野さんご馳走さまです！」
「ご馳走さまです」
相葉くんと二宮くんがペコペコと頭を下げていれば、大野先輩は「お財布が泣いてる」とちょっとふざけたような口ぶりで笑った。
.
居酒屋から歩いて５分程度。改札を抜けて、帰る方向が違う櫻井と別れる。
相葉くんの家はどこだか分からないけど、櫻井を送ると言い張って
「じゃあおやすみなさい！」と元気に手をブンブンと振って櫻井を追いかけて行った。
大野先輩とは一駅違い。二宮くんとは乗り換え違いだけど、途中まで一緒。
ホームで電車を待っている際、大野先輩が「二宮くんって翔ちゃんのこと嫌いなの？」と突然話を切り出した。
「え？櫻井さんですか？」
「うん、何か二人全然話してなかったからさ」
「それは席が遠かっただけっすよ」
「そうなの？翔ちゃんイイ子だから仲良くしてあげてね」
「ああ、はい」
大野先輩をチラっと横目で見れば、うふふって笑われた。
何だか笑われてばっかりだな今日。
電車が来て乗り込んで、数駅乗り過ごしていれば、「じゃあ、俺乗り換えなんで」と二宮くんが軽く頭を下げてから電車から降りて行った。
「ねえ、Aちゃん」
「はい？」
つり革に掴まって、ゆらゆらと身体を揺らす大野先輩に目を向ける。
「翔ちゃんのこと好き？」
「え？」
「翔ちゃんはAちゃんのこと引くほど好きだからね」
ホント引くほどだよ、ともう一度言葉を繰り返して、大野先輩はふふって笑った。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1548人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：妃紀
| 作成日時：2018年3月15日 19時
