34:不機嫌な理由 ページ34
.
結局それから３０分後。
そろそろ帰ろっか、という大野先輩の言葉でお開きとなった。
少し酔いが醒めたかな…と思いながら立ち上がったとき
いきなり立ったせいか、フラッと身体がよろけた。
「大丈夫ですか？」
よろけた身体を支えるように、二宮くんが腕を引いてくれたおかげで、何とかバランスを戻した。
「ありがとう、ごめんね」
「いいえ」
ふふっと二宮くんが笑う。白い頬、結構お酒飲んでいたくせに紅くない。
あれ？二宮くん酔ってない？
個室のドアを開けて、一足先に出た櫻井と相葉くんの後を追う。
「あ、大野先輩、私トイレ寄って来ますね」
「了解〜待ってるね」
大野先輩にそう伝え、トイレの方へと向かった。
待たせているのは悪いから素早く用を済ませ、トイレから足早に出た時だった。
「わっ！ビックリした！」
出た瞬間に壁に凭れて腕組みをしている櫻井の姿が視界に入り込む。
まさかいるとは思っていなかった櫻井の姿に驚き、大げさに声を上げれば
私の声に気付いた櫻井が顔をこちらに向け、少し冷たい目つきで私を見据えてきた。
「ちょっとお前さ」
「櫻井もトイレ？」
「なわけねぇじゃん、Aを待ってた」
トイレはテーブル席から入り組んだところにある。少し薄暗い照明。
壁に凭れた身体を起こし、櫻井が不機嫌さを前面的に纏って、私の真正面に立った。
「何？どうしたの？」
「ふざけんなよマジで、お前バカか？俺の気を考えろよ」
「はあ？バカって…えっ！？」
いきなり左腕をグイッと強く引かれ、その反動で勢いよく櫻井の胸の中に身体が飛び込んだ。
「え、な、なにっ？ちょっと櫻井こんなとこでやめてよ…」
こんな公共の場で抱き締められてる姿なんて見られたら恥ずかしい。
入り組んだところにあるけど人目につく可能性だってある。
「簡単に他の男に触れさせんな」
「え？」
「イラつく」
恥ずかしさを抱えていれば、ギュウっと強く抱き締められ、櫻井と身体がピッタリと密着する。
背中に回る腕の強さが息苦しい。
顔を少し動かすと、ふわっと香ったタバコと香水の匂い。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1548人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：妃紀
| 作成日時：2018年3月15日 19時
