◆29:愛の反動 ページ29
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鈍くなった思考が一気に醒めた。
急いでテーブル席に戻り、個室のドアをバン！と開ければ、大野の言っていた通り
Aの向かいにいたはずの相葉が大野の席に座っていた。
「あ、センパーイ」
バン！と勢い良くドアを開けた音に気付いた相葉が、ふにゃふにゃの顔で俺を見た。
そして恐れていた現実。
「ちょっと相葉くん…？」
無駄に近い。ピタッとAに身体を寄せて、「Aさんカワイイ」と酔っ払いのテンションで絡む相葉。
今すぐ引き剥がそうと回り込む手前だった。
「相葉くん、Aさん困ってるから」
Aの右隣に座っていた二宮が一足先に相葉を押しのけ
Aの肩を軽く抱いて引き剥がした。
はあ？！
心の声が出ていないかの心配より先に、二宮の行動に苛立った。
さらっと肩を抱いたその手は何だ。
その手の意味はあるのか？別に肩を抱かなくてもいいだろ？
呆然と立ち尽くす俺に、二宮の視線を感じて目を向ければ
「櫻井さん座らないんですか？」と淡々と言われて我に返った。
「ああ、ちょっと考え事を…」
適当に嘘を吐き捨て、さらっと相葉を元の席に誘導して、腰を下ろす。
「相葉くん、飲み過ぎかな？ちゃんと自分の立場をわきまえてね」
裏に毒を忍ばせ言葉を吐けば、相葉はふにゃふにゃの顔で「スミマセン」と謝った。
・・・だめだ、今すぐ殴りたい衝動が走る。
外面を良く見せるのがこれほどまでに上手くいかないのは初めてだ。
仕事上、口の悪さを隠すなんて大したことなかったが、どうも“恋愛感情”が絡みつくと上手くいかない。
建前の面として愛想の良い爽やかさを纏うのは合理的。
そこに窮屈さもなければ、人間関係を円滑に進めるには効率の良いこと。
どれもこれも重すぎる愛のせいだ。
私と仕事どっちが大切なの？なんて言っちゃうような重たいオンナか俺は？
・・・笑えねぇ。全く笑えねぇじゃん。
言われたことはまああった気もするが、自分がこういう風な無駄な感情を抱くことは初めてだ。
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作者名：妃紀
| 作成日時：2018年3月15日 19時
