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私が2週間の昏睡状態から目を覚ましてから、時々夢を見ることがある。
決まってそこに出てくるのは、あの知らない誰かの姿だった。
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昼下がり、ミンミンと蝉が鳴き始めた。
ダイニングには、手のつけられていない山積みの教科書が積んである。
初夏のこの日、私はすっかり元気になって氷を削っていた。
｢Aーーーっ、もうそろそろ人数分削り終わる？｣
母からの呼び掛けに うん！！ と威勢よく返事する。
私の分、母父弟の分そしてお隣さんの父母の分そしてその家の息子で幼馴染の相葉雅紀の分。
雅紀の分だけ少なくしとこ。
｢出来たよーーっ！｣
お母さんが白い氷の上に赤色の輝くシロップをこれでもかとかけてゆく。
このイチゴシロップはうちのお母さん特製。
｢んっっま！…美味しすぎる。｣
私と雅紀は、うちの中で1番風当たりの良い縁側で並んで座った。
｢ちょっと雅紀、こぼれてるって。｣
かき氷皿の淵からぽたぽたと零れるシロップを拭いとった。
ありがと。って、100点満点の笑顔。
｢そーいえばAさ、今日彼氏呼ばなかったの？｣
｢彼氏って、私いなかったじゃん｣
｢二宮和也だろ？俺の友達じゃんって言ってさ、盛り上がってたじゃん。｣
｢ごめん……私部分的な記憶障害らしくて、｣
｢あ、そうだったんだ…。｣
そう言って肩を落とし、申し訳なさそうな顔で彼がこちらを見つめてくる。
あからさまに落ち込む雅紀が可愛くて可愛くて仕方ない。
｢大丈夫だから。｣
やっぱり私は、この人のことが好きなんだなあって思った。
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作者名：ななめ28° | 作成日時：2018年7月13日 20時
