きっと、いつかは＿＿＿。 (ページ18)

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颯馬、といういつもの安心する声で目覚めた。
「蝉…」
目を開いて視線だけで周りを見たけど、蝉はおろか、人もいなかった。
少し離れたところに白石先生(？)が見える。
コンタクトが外れていてよく見えない。
裸眼、どれぐらいあったっけ。
まだ眠い。
もう一寝入りぐらい、いいかな？
また、瞳をとじる。

「名取？」
なんだ、寝ようとしたのに。
ゆっくり瞼を持ち上げる。
「緋山先生…？」
やっぱり、よく見えない。
目を細めて確認しようとしても、よくわからない。
体を持ち上げようとすると、押し戻された。
「馬鹿じゃないの？さっきまで意識なかった奴がいきなり起き上がっちゃだめでしょ、習わなかった？」
緋山先生は暫く黙ったけど何も返さない俺に、口を開いた。
「あとで話あるから。白石！名取起きたから診てやって。立ち上がれるようになったら私に声かけて。」
白石先生と入れ替わるように緋山先生はいなくなった。
白石先生はもう痛くない？と、俺に聞いた。
「痛くないです。眠いですけど…」
「ごめんね、副作用。でも緋山先生話あるみたいだし、先そっち行ってあげて？名取先生今日は一応入院。明日は有給とっていいよ。」
ゆっくり体を起こして、心電図とつながるコードを外した。
点滴を連れて、緋山先生に話しかける。
「緋山先生？」
こっち、と手招きされ、病気等を説明する部屋へ入れられた。

「あんた、妊娠してんの？」
……。
出来れば、知られたくなかったし、答えたくない質問。
「どれぐらいの人が知ってるんですか？」
質問に質問で返すのはよくない。
だけど、否定も肯定もはっきりとは言いたくなかった。
「…私だけ。ここまで言わなかったってことは知られたくなかったんでしょ？」
「……男なんて、気持ち悪いと思われるんで。うちの父、そういうの嫌いなんです。父の耳に入れば、多分中絶させられる…。」
今父の耳に入れば、絶対中絶だ。
喜ぶはずがない。父親を紹介できない子なんて。
「あんた、男好きなの？」
「いえ、別に。俺。俺、もうあんまりこのことについて話したくないです。」
蝉の事がしれわたったら、逮捕されちゃうかもしれない。
もっとも、戸籍を持たない彼は逮捕しようがないと思うが。