ハッピーシンセサイザ【マサイ】 (ページ22)

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マサイside

(いた)

ステージの二列目の中央にAはいた。

緊張からか少し引きつっているが、笑顔で歌い、踊っている。
ダンスも努力して身につけたのだろう、
２０人ほどいる他のメンバーが目に入らないくらい、
キラキラして見える。

Aから目が離せなくなる。

これは絶対売れる、と正直に思った。
一般客が７人しかいない不安も消えた。
すぐに満員になるほど、売れるだろうと思えた。

鷲掴みされたかの様に胸が痛むが、
考えるのは後回しにして、
目でAを追っていく。

三曲歌い終わると、挨拶があり、
メンバーの自己紹介が始まる。
１列目のメンバーが名前と一言を話し、
舞台袖にはけていく。
Aがいる２列目のメンバーが一歩前に出て。
順番に自己紹介していく。

「１６歳の山口Aです。今日はすごく緊張してますが、最後まで笑顔で頑張ります。」

最後まで噛まずに笑顔で言いきるのを見て、
モトキと２人で安堵する。

メンバー全員の自己紹介が終わると
次の曲が始まる。
次からは全員ではなく数名ずつ歌っていくらしい。
何曲目でAが出てくるのか、
上の空でステージを見つめる。

五曲目が終わり、ステージに電子キーボードと椅子が運ばれる。

先ほどの衣装とは違う衣装を着たAが出てきて、椅子に座る。

２人で歌うのだろう、もう１人のメンバーに目配せをする。

Aの手が震えている。
緊張しているのだろう。
瞳が少し、潤んでる。

たまらずにモトキと同時に叫んだ

「「頑張れーっ！！」」

びくっとしたAは俺とモトキを見て
可愛く、笑った。

そして慣れた手つきで演奏を始め、歌う。

何度も聞いてきたはずのAの歌声が遠く感じた。