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「dn」side
僕たちは聞いてはいけないことを聞いてしまった。
あの子は唇を噛み締め、わざとらしい笑顔で帰ろうとしている。
クォク・バンって人は、何も言わずにあの子から背を向けた。
それは、Aという単語を喋った後悔からではなさそうだ。
きっと、彼女が僕らに隠している"何か"があの人には分かるのだろう。
聞きたくても、聞いてはいけない……なんて…
そんなの無理に決まっているじゃないか。
僕らはお節介さんなのかなぁ?
苦しそうなあの子の表情は、僕らの心まで締め付けられた。
聞いてはいけない…
分かってはいるけど…
あの子に笑顔になって欲しい。
ヒョンたちは皆、しょげた顔。
クプスヒョンの「帰る」で、明るくなった顔なんて1つもない。
誰もがクプスヒョンに縋る思いだった。
ラズベリーの匂いが僕らに刺さる。
まるで、部屋主が「私に近づかないで」って言ってるかのごとく…
いつもは甘い匂いなのに、刺激されると同時に酸っぱい匂いが広がる。
甘酸っぱいベリーはきっと何もかもを知ってる。
僕らには教えちゃいけないから、味は酸っぱいまま。
きっと甘くなりたいのに、あの子は拒否し続けている。
13個のダイヤモンドと交わった、青いベリー。
苦しくてたまらないのに逃げるだけ。
僕たちは頼りないの?
そうだよね…
たかが家政婦と雇い主の関係。
切ろうと思えば、いつでも切れる関係性。
でも逆に考えたら、それほど気楽な関係ってことじゃない?
って、僕らは思うけどあの子はきっと思わないんだろうね〜…
皆、俯きながらマイホームへ戻っていった。
静かに見送るクォク・バンって人を横目にして…
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作者名:青兎月 | 作成日時:2021年2月28日 16時