笑顔でいたい【sho.s】

３４ ページ34

Aside



あれから二週間がたった。


未だにあの味は再現できていないものの
我ながらに料理の腕は上達したように思う。
レパートりも増え、最近はお菓子作りにも
チャレンジしてみた。


だけど、やはり余命宣告されただけある。


病魔は着実に私の体を蝕んでゆく。


先週の定期検診で骨髄に
転移したことがわかった。


つまり、全身転移したということ。


翔「おっと危ない」


ちょっとした段差にも躓くようになった
私の体を支えてくれた。


「ごめんね」


と、壁をつたい
リビングのソファーに移動する。
このごろ、たったこれだけの動作でも
動悸、息切れがひどくなってきた。


辛いと思うことも増え、
なかなか笑顔が作れない時が増えてきた。

彼は私にプロポーズしたあとから
ごめんね、と私が言うと、決まってこう言う。

"なんで謝るの？俺はAがいてくれるだけでいいの。無理して笑う方がつらいよ？“


優しい口調で。でもどこか決意にも似た
思いを受け取ることがある。

そんなときは決まって、うん…、と
返すしかなくなってしまうのだ。

３５→←３３

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す