【言葉のいらない瞬間】5

*215 坂本side ページ46

岡田「じゃあ、やっぱり」
坂本「いや、あいつはまじじゃないと思う」
岡田「まあくんは何でそんなに否定するんや」
坂本「わかんねえ、でも違うと思うんだ」

確かに俺は何で認めないんだろう
あの社長からあの写真を見せられたから？
あれが引っ掛かっているのか？

岡田「まあくんはひろしのことどう思ってるの？友達？それとも仲間？」
坂本「長野かあ、強いて言うなら戦友かな」
岡田「戦友？」
坂本「共に戦ってきた仲、俺にとってはな？あいつはどう思っているか知んねえけど」
岡田「まあくんとひろしが昔どんなんだったかは知らんけどひろしはまあくんのこと大切に思ってるよ」
坂本「ん？いや、あいつが大切に思っているのは岡田だけだと思う」
岡田「それはないよ、だってひろし、坂本くんの前だと笑ってるもん」
坂本「空気の流れに従ってだろ、あいつの目は笑ってない」
岡田「なんでや！何でそんなんゆうんや、ひろしのこと決めつけんといてっ」
坂本「ああ、そうだな。でも俺は、あいつは結局いつも俺らの深いところに入ってくるようでさりげなく去っていく。そして肝心のあいつの中には入れてくれない、そうだろ岡田？」
岡田「だったらなんや、例えひろしの中に入れてくれなかったとしてもひろしが俺らの中に入ってくれることが大事やろ？」
坂本「でもな、それってさ岡田、信用されてないんだよ俺らは。あいつはただ目の前の現実に目を向けて、友情とかそういう楽しいところには入ってこない。何かの目的、それは岡田に関することでそれに向かってことを実行しているように俺には見えるんだ。実際あいつとのやり取りで無駄なんか無かったろ？全部お前に関係するだろ」
岡田「じゃあ俺は、ひろしの何なん？罪滅ぼしか？」
坂本「そうはいってないっ」
岡田「ひろしが俺に責任感じてるって言いたいんやろ？俺がいけないことなのに」
坂本「違うだろ」
岡田「だったら何なんや！まあくんが言いたいことはこうやろ？ひろしは俺に罪滅ぼしを続けてそのためにだけただ生きてるって」

俺は何も言い返せなかった
だってそうだとも少なくとも思っていたから
本当のところはわからないけど
長野が岡田に対して罪の意識を持っているのは確かだ
でも、罪滅ぼしだなんて実際俺は思いたくない
あいつはちゃんと岡田には愛情とかそういう優しさを出していると思っていたい
だってそう見えるから
ただ注ぐだけで受け取ろうとはしないんだ

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