【言葉のいらない瞬間】5 (ページ14)

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*184 坂本side ページ14

坂本「それでも、今日話したことくらい言ってやれよ、剛、健のことすっげえ心配してたんだから」
長野「そうだね」
坂本「お前なあ」
剛「いいよ坂本くん。わかったから、長野くんありがとう。俺のためでしょ？」
坂本「は？」
剛「俺が健から聞きたいって思ったこと長野くんが聞いちゃったんでしょ、だから」
長野「ちがうよ。俺が話すの面倒だったの。こういう話って他人が絡むと面倒になるじゃない」

車の中に外の風が優しく入ってくる
今剛はどんな顔をしているのだろうか
長野の今の言葉は本心ではないはずだ、剛だってわかってるはず

剛「長野くん、ありがと。ありがとう」

剛は窓の外を見るように頬杖をついていった

長野「剛？」
剛「…」
長野「明日休みなんだから健と行ってきなよ」

俺には何のことだか分らなかったけど今話しかける空気ではないと思った
剛が髪の毛を風にもってかれながら長野に振り向いたのがバックミラー越しに見えた

剛「長野くんは明日でもいいと思うの？早くない？」
長野「それは、少し早いかもしれないけど健が限界でしょ、遠くから見るだけでも、行ってきな」
剛「うん、わかった」
長野「よっちゃんでも使ってさ」
剛「ねえ、井ノ原くんってさ」

剛がちょっと悪戯な目で訴えてきた

剛「父親も先生だったりする？」
坂本「えっ」
剛「うそうそ。井ノ原くんのこと思い出したらさ、そういえば俺、井ノ原って名前の教師もう1人知ってんなあって思って」
坂本「井ノ原先生…」
剛「あったことはないんだけど前いた高校にさ学年は違ったけどいたんだよ珍しい苗字だったからさ」
長野「そっか。」
剛「まあ、でも井ノ原くんのお父さんが先生ならもっとまじめだったんだろうなあとか思って言ってみただけだよ」
坂本「真面目か」
長野「井ノ原は十分まじめだよ」
剛「そっかなあ…俺にはガキにしか見えねえ」

お前が言うかよ！

長野「あ、剛、もう着くよ。あ、明日さ健と井ノ原んとこ行く前にうちに寄ってくんない？岡田に」
剛「大丈夫、行くよ。それより、長野くん、岡田無茶させないでね、足怪我してるっぽかったから」