【言葉のいらない瞬間】5 (ページ13)

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*183 坂本side ページ13

そういって剛は進行方向に対して反対の向きに指をさした

坂本「お前何時だと思ってる。どーせお前たちの乗ってきた電車って終電だろ？」
剛「あ、そっか。じゃなくても長野くんちは俺ん家に向かう道じゃん」
坂本「だからだよ、あいつ、俺が剛を来るまで送り届けるの見越して歩きのくせにわざと遠い道選んでんだよ」
剛「ねえ、長野くんって」

目の前に長野の姿が見えた

坂本「やっぱこっちだったか」

―プップッ

クラクションを鳴らすと長野が振り返る
俺は長野の隣に車を止めて窓を開けた

坂本「よ、長野」

後ろから剛の視線を感じる

長野「坂本くん、こっちじゃないでしょ」
坂本「お互い様だろ」
長野「違うよ、俺のは散歩」
坂本「じゃあ、散歩は中止だ、乗れよ」
長野「強引だな坂本くん」
坂本「剛がお前に聞きたいことあるって」
長野「剛が？」

俺は後部座席のドアを開けて剛のことを見た

坂本「ほら、剛、気になってんだろ？」
剛「え、あっと…」
長野「なあに？剛？」
坂本「いいから乗れよ」
長野「いいよ、夜風気持ちいし、で、何聞きたいことって」
剛「なが」
坂本「そんなもん車で窓開けりゃいいだろ」
長野「坂本くんうるさい、俺は剛と話してんの」
剛「長野くんっ」
長野「何？」
剛「いいから、とりあえず乗って」
長野「剛もそれ？わかったよ乗るよ」

俺は剛に感謝しつつ目で合図した
長野は剛の隣に座る
俺はドアを閉めて車をUターンさせようと走らせた

長野「で、何話って」
剛「長野くん…何で、」

そこで剛は息詰まった

坂本「悪い、剛。長野、あれほんとは嘘なんだ、剛が長野のこと気になってたみたいだからついな」
長野「俺のこと気になってるって何？俺には聞けない話？」
剛「いや、でも、俺、それとは別に長野くんに聞きたいことあったんだ」
長野「そう」

長野のふわふわした声は若干だが心のシャッターを閉じるように固くなったように感じた
剛は夢中で気づいてないみたいで、そのまま続ける

剛「何で、健と今日話したこと隠したの？」
坂本「お前言ってなかったのか！」
長野「別に隠したつもりはないよ。だってあの話は俺の口から言うことじゃないでしょ。健の言葉だから」