【言葉のいらない瞬間】5 (ページ12)

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*182 坂本side ページ12

車のキーをもって外に出ようとしたら剛に呼び止められた

剛「坂本くん」

坂本「ん？なんだ剛、どうした？」
剛「少しだけあがってもいい？」
坂本「いいけど…」
剛「健どこで寝てる？」
坂本「あ、ああ、健か。健ならリビングの…お、おいっ」

剛は勢いよく靴を脱いで真っ先にリビングへと向かった

剛が脱ぎ散らかした靴をそろえて足音を立てないように静かに追いかけた
剛はリビングの入り口のドアにぴったりとくっついて健のことを見ていた

穏やかに眠る健の顔を見て剛は眉間にしわを寄せていた

健のこと心配してたんだな…
剛が全然健のこと話さないから変だと思った
でもやっぱりこいつは健のこと心配してたんだな
そんな顔で健のこと見つめてたら健が心配するぞ

俺は剛の気が済むまでまった

しばらくたった後で剛が俺に気づいたのか振り向いてきた

坂本「もう少しここにいるか？」

剛は俺の顔を見てからもう一度健の顔をじっと見てそしてもじもじしながら床を見つめた
手で鼻をつまむようにして

剛「いい。」
坂本「健さあ吹っ切れた顔してるだろ、さっきな長野が家に来てさ、なんか話したらすっきりしたみたいで」
剛「…坂本くんいいから帰ろ」
坂本「あ、ああ…。」

剛が玄関の方に向かう途中で振り返ってきた

剛「坂本くんは気づいてたの？」
坂本「何を？」
剛「健のことだよ、ここに誘ったんじゃねえの」
坂本「いや？健から来たんだよお前は帰っちゃってたしな」
剛「そう…」
坂本「でも。長野はどうだか、少なくとも異変には気づいてたみたいだけどな」
剛「ねえ、長野くんって」
坂本「剛、話はあとでだ、早く帰るぞ」

俺は廊下に立ち尽くす剛を抜かして玄関に向かった靴を履いて外に出た

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車の中

剛「ねえ、坂本くん俺ん家こっちじゃないけど…」
坂本「悪いな剛、ちょっと帰り遅くなってもいいか」
剛「え、べ、別にいいけど」
坂本「ちょっと野暮用がな」

俺は剛の家とは真逆の方向に車を走らせていた

剛「長野くんでしょ」
坂本「え」
剛「だって坂本くんが動くって言ったら長野くんくらいしか思いつかないもん」
坂本「なるほどな」
剛「でもこっちじゃないよ、駅はあっち」